「生涯一捕手」座右の銘導いたノムさん節の師、草柳大蔵さん 出版界の注目高まる

[ 2020年2月13日 05:30 ]

評論家の草柳大蔵氏
Photo By 共同

 プロ野球南海(現ソフトバンク)で捕手兼任監督を務め、ヤクルト、阪神、楽天でも指揮を執った野村克也さんが虚血性心不全のため、84歳で死去してから一夜明けた12日、数々の名言を残した野村さんの“師匠”に出版界の注目が集まった。

 小学館マーケティング局によると、野村さんの著書の代表作で、自身の経験をもとに指導者のあり方などをつづった「野村ノート」など、小学館文庫の5作の重版がこの日、決定した。出版関係者は「ほかの著書にも反響があり、野村さん関連で何か企画をしたいと考えている会社は多いようだ」と語る。中でも関係者の間でクローズアップされているのが、作家の草柳大蔵さん(02年死去、享年78)。野村さんの人生に大きく影響を与えた人物だ。

 戦後を代表するジャーナリストで評論家としても活躍。幅広いジャンルを取材し、日本の週刊誌ジャーナリズムの草分け的存在と呼ばれている。野村さんとは妻沙知代さんを介して知り合った。

 知人によると、77年に南海から兼任監督を解任され、進退を迷っていた野村さんは「生涯一書生」という禅の言葉を草柳さんから贈られた。「人間は一生涯勉強」との教えに、野村さんは必要としてくれる球団がなくなるまで現役を続けることを心に決め、これがきっかけで「生涯一捕手」という名フレーズが誕生したという。

 「いい仕事は必ず誰かが見ていてくれる」などのアドバイスも深く心に刻まれ、師として慕った。読書を勧められ、本を手に取ったことで話すこと、伝えることの腕を上げ、独特の野村節も生まれた。

 書籍関係者は「草柳さんの作品に関しても各社、リサーチを開始している。野村さんの“師匠”とあって注目度が高く、今後何かの企画が実現する可能性がある」と話している。

 ◆草柳 大蔵(くさやなぎ・だいぞう)1924年(大13)7月18日生まれ、神奈川県出身。48年、東大法学部を卒業。八雲書店編集者、産経新聞記者などを経て、フリーのプロライターに。56年に週刊新潮、58年に女性自身の創刊に参画。84年にNHK放送文化賞を受賞し、NHK経営委員などを歴任。主な著書に「ものを見る眼・仕事をする眼」など。02年に78歳で他界した。

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