高松商・浅野、伝説残して聖地去る 高校通算67号と「少しびっくり」一、二塁の状況で申告敬遠

[ 2022年8月19日 04:05 ]

第104回全国高校野球選手権第12日・準々決勝   高松商6―7近江 ( 2022年8月18日    甲子園 )

<近江・高松商>7回1死一、二塁で高松商・浅野は申告敬遠される(撮影・井垣 忠夫)
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 高松商・浅野翔吾外野手(3年)が18日、近江との準々決勝で世代屈指の右腕・山田陽翔投手(3年)から高校通算67号を含む3安打を放った末に惜敗した。2点劣勢の7回には1死一、二塁でも申告敬遠で勝負を避けられるほどの存在感。今大会10打数7安打3本塁打の足跡を残し、プロ志望届の提出を明言した。

 浅野は山田の表情から真っ向勝負を確信した。2点を追う3回1死一塁。「山田投手が大橋捕手を見ながら、少し笑ってうなずいていた」。カウント1―1からの3球目。146キロを豪快に振り抜き、バックスクリーンへ突き刺した。一時同点に追いつく高校通算67号。佐久長聖との2回戦での右中間、左越えと合わせて「全方向弾」。一塁を回り、完璧な手応えが残る右拳を高々と突き上げた。
 
 初回先頭でスライダーを左翼へ二塁打し、5回2死一塁では沈むツーシームを左前打。難敵山田の持ち球すべてを攻略し、3―5の7回1死一、二塁では走者が詰まった状況でも申告敬遠で勝負を避けられた。92年夏、走者の有無に関係なく5打席連続敬遠だった星稜・松井秀喜とも重なる警戒ぶり。異例の満塁策を「少しびっくりした」と受け止めた。

 今までは敬遠で途切れることも多かった攻撃が井桜悠人、渡辺升翔の連打でつながり、押し出し死球で一時逆転の本塁を踏んだ。「後ろの打者が自覚を持ってやってくれた結果。敬遠されても、いい打者が後ろにいる。いいチームになった」。敬遠されたら次の打席ではボール球を振り「自分勝手だった」という以前と違った。仲間を信頼して戦い抜いた。

 屋島中時代から生粋の飛ばし屋だった。軟式球でも両翼100メートルはあろうかという練習場で外野フェンス外側に駐車する車にぶつけたことは一度や二度ではない。中学からの同期生・植木皓大投手(3年)は「そんな選手、浅野以外見たことない」と懐かしんだ。当時から見せつけていた強打の迫力。進歩を実感することもある。「チーム打撃は成長できた」。主将として冷静に周囲を見渡す能力を身に付け、長尾健司監督には「もっと上の世界でさらに成長してほしい」と背中を押された。「上の世界」とは当然プロのことだ。

 「体は小さいが、パンチ力はある。中距離打者で、強い打球を打ってチャンスをつくれるようになりたい」

 惜敗後の整列で「完敗や」と山田に声をかけられ「ありがとう」と返した。大観衆の拍手を受けた浅野の目に涙はなかった。 (八木 勇磨)

 ◇浅野 翔吾(あさの・しょうご)2004年(平16)11月24日、香川県出身の17歳。屋島小3年から野球を始め、屋島中では軟式野球部に所属して3年時に全国大会8強。U―15日本代表に選出。高松商では1年夏の県独自大会から出場。50メートル走5秒9、遠投110メートル。1メートル71、86キロ。右投げ両打ち。

 ▽92年夏の松井秀喜(星稜)の5打席連続敬遠 明徳義塾と2回戦で対戦。0―0の初回2死三塁、0―2の3回1死二、三塁、1―3の5回1死一塁、2―3の7回2死無走者、2―3の9回2死三塁の全5打席で勝負を避けられた。

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