制限緩和の実証実験開始 ウィズコロナ時代の観戦 踏み出された新たな一歩

[ 2021年10月8日 13:03 ]

6日のルヴァン杯準決勝「名古屋―FC東京」戦で導入された「ワクチン検査パッケージ」の席
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 大規模イベントの入場制限緩和へ向けた「ワクチン・検査パッケージ」活用の実証実験が始まった。指定の入場券を購入したファンはワクチン接種の証明や、検査の陰性証明を提示する。6日、Jリーグのルヴァン杯準決勝、名古屋―FC東京で初めて実施された。

 プロ野球では10月中旬以降に公式戦での実証実験を始める。チケット販売前のクライマックスシリーズ(CS)や日本シリーズでも実施を目指している。日本シリーズの主催は日本野球機構(NPB)。NPBの井原敦事務局長は「日本シリーズでも計画は練っています。会場が直前まで決まらないので。会場になりそうなところの自治体との折衝は進めています」と話した。

 ルヴァン杯では現状の観客上限数の1万人とは別に、1800席を実証実験用に追加販売した。確認ブースを設け、接種証明や陰性証明を持った入場者は、証明確認を経て入場券を受け取った。確認に要した時間は1人20秒ほどだったという。

 コロナ下においてはプロ野球界も大きな打撃を受けてきた。昨年の序盤は無観客開催を余儀なくされ、その後も厳しい入場制限が続いた。チケット収入は球団経営の柱であり、どの球団も2年連続で大幅な赤字は避けられない。入場者制限緩和へ、待ったなしの状況に追い込まれている。

 プロ野球とJリーグが合同で設置している新型コロナウイルス対策連絡会議の専門家チームは、制限緩和へ3つのポイントを挙げた。(1)ワクチン接種率の向上、(2)抗体療法の充実、(3)飲み薬の普及だ。座長の賀来満夫氏は「簡単ではないが接種率が90%ぐらいまで進むこと。抗体療法をスムーズに受けられること。飲み薬が広く普及すること。この3つが加わると、ほとんど満員でも重傷化する人が少なく、感染しても軽症で、医療現場を逼迫(ひっぱく)させることがない、という目安になる」と話す。

 ブレークスルー感染のリスクは確実にあり、ワクチン接種後の有効期間を国が定める必要もあろう。専門家たちはその上でも、基本的な感染対策は欠かせないと指摘する。舘田一博氏は「ワクチン接種率が高まった国も接種率は70%にいっていない。そんな状況で緩んでしまい、マスクをせずに騒ぐと感染が広がってしまう。ワクチン接種後も、基本的な感染対策はしばらくの間は徹底しないといけない」と説く。生ビール片手に大声で声援を送る、かつての球場の景色には簡単には戻れない。それでもウィズコロナのスタジアムを埋めるため、新たな一歩が踏み出されたのは確かだ。(記者コラム・後藤 茂樹)

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2021年10月8日のニュース