3回完全 マエケンの“第2の宝刀”を誕生させた「感覚よりデータ」の意識改革

[ 2019年3月11日 02:30 ]

オープン戦   ドジャース2―0マリナーズ ( 2019年3月9日    グレンデール )

力投する前田(撮影・会津 智海)
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 ドジャースの前田健太投手(30)がマリナーズ戦に先発し、3回42球を投げて打者9人を完璧に抑えた。際立ったのは3分の1にあたる14球もチェンジアップを使い、直球との2球種を軸とした配球。昨季から使い始めた球種だが、先発で33%も投げたのは初めてだった。

 「チェンジアップの存在が凄く大きい。チェンジアップがあるだけで苦手意識が消える。右左関係なく、マウンド上で勝負する前から不利なメンタルになることはなくなった」

 過去3シーズン、右打者の被打率・212に対し、・261と明らかに苦手にしていた左打者への対策としてチェンジアップを改良。今やスライダーに続く決め球となった。対戦した左3人はいずれも三振。右打者にも投げ、全14球中、空振り6個、ファウル5個、内野ゴロ1個、ボール2個で、芯で捉えられた当たりはゼロだ。

 スプリットのように鋭く落ちる、今のチェンジアップを初めて実戦で使ったのは昨年3月20日のアスレチックス戦。右打者チャプマンから空振りを奪った。とはいえ、昨季序盤は本人に手応えがなく、あまり使わなかったが、球団に提供されたデータを見たことで自信が生まれた。

 「落ちている幅や被打率が凄く良いから、もっと自信を持って投げていいよ、と言われた。投げ始めた時に1本完璧に打たれたら、“(感覚的に)ああ駄目だ”と思ってしまう。でも何十打席、何百打席投げて、“(データ上)打たれてないよ”“僕のスライダーより左打者には有効だよ”とか出されると、自信にもなる」

 助言を信じて6月下旬からどんどん投げ出すと、結果も付いてきた。昨季のチェンジアップの空振り率は47・6%でスライダーの44%よりも上。被打率も・135で、スライダーの・216よりも効果的だった。

 12球団と30球団。日本よりも対戦する選手が多い分、データが重要になると実感している。

 「日本では、自分の感覚を信じて、このボールがこの打者に有効だと思えば投げていた。でも、こっち(メジャー)は選手がどんどん入れ替わるし、新しい選手が出てくるとデータを信じるしかない。自分の感覚を信じて打たれて、後悔もしたくない。データに間違いはない。苦手な、率の悪いコースがあればそこにきっちり投げるよう心がける。嘘の率はないので」

 日本で2度、沢村賞に輝いた前田は言うまでもなく、一流投手としての優れた感覚を持ち、それに従ってきた。しかし、メジャーでの3シーズンを経て今は「自分の感覚が信じられない時もあるので」とデータを駆使する。チェンジアップという「第2の宝刀」は、前田の意識の変化による産物だった。

(奥田秀樹通信員)

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