巨人・坂本工の先輩 関学大準硬式出身の元西武“投げる化学者”の今

[ 2019年3月11日 11:00 ]

ミニマーライオンの前で現役時代のグラブとボールを手にポーズを作る山本歩氏(本人提供)
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 「投げる化学者」と呼ばれた男を覚えているだろうか。05年に西武の大学・社会人ドラフト5巡目指名を受けた山本歩。関学大の準硬式野球部、さらに理工学部という異色の経歴が当時は話題になった。

 変則サイド右腕で最速144キロの直球とスライダー、ツーシームが武器。プロ2年目の07年に1軍デビューし、5試合全て救援で6回1/3を投げ2失点、11奪三振を記録。「打者が大学時代と同じ反応をする。全然、通用すると思った」と振り返る一方で「硬球になって勝負球の1つのツーシームが曲がらなくなったのが誤算だった。スライダーの調子が悪い時は勢いだけで投げていた」とも語った。3年目の08年には慢性的な右肘痛にも悩まされ、同年オフに右肘をクリーニング手術。復帰後は微妙なズレが生じ「スライダーの感覚を忘れてしまった」という。結局07年以降は1軍登板がなく、09年オフに西武から戦力外通告。その後、トライアウトを受けるも声が掛からず、わずか4年間の現役生活に別れを告げた。

 現在、山本歩はシンガポールにいる。現役引退直後の10年に西武の2軍用具担当補佐を務めたが、1シーズンで退団。「球団に残って将来はスコアラーになりたい思いもあったけど、化学の仕事がやりたかった」と、猛勉強の末に翌11年4月に関学大の理工学部大学院に入学。理工学専攻で有機化学を学び、卒業後の13年に化学メーカー「クラレ」に新卒学生として就職した。研究職で入社し、3年目からは技術営業職を担当。16年秋から東南アジア経済を代表するシンガポールに駐在している。

 準硬式野球界からのプロ入りも珍しいが、元プロ野球選手が理系の大学院で学び直し、化学メーカーの仕事に従事するのもかなり珍しいケースだ。山本歩は「今だから言えるけど(2軍用具担当補佐時代に)試合中に隠れて勉強していたこともあった」と申し訳なさそうに笑う。

 今月4日に巨人の育成選手から支配下登録された坂本工も同じ関学大の準硬式野球部出身。面識こそないが、同じ投手で“先輩”にあたる山本歩は「“You Tube”で見たけど、打者はタイミングが取りづらそうにしている。うらやましいし、自分の時を思い出す。頑張ってほしい」とエールを送った。海の向こうでは後輩の活躍が何よりの励みとなっている。

 現役時代の西武では中村、栗山と同学年で、涌井(現ロッテ)からは「博士」と慕われていた。「現在の目標は自分のウィキペディアを更新してもらうこと。誰もやったことがないことをやって、人が見て面白いと思う道を歩みたい」。プロ野球の世界から化学の世界へ。アジアを股に掛ける「投げる化学者」は充実した日々を過ごしている。(記者コラム・柳原 直之)

 ◇山本 歩(やまもと・あゆむ)1983年(昭58)7月28日生まれ、兵庫県出身の35歳。三田学園では3年春の県大会準優勝が最高成績。関学大の準硬式野球部では公式戦通算42勝7敗と圧倒的な成績を誇り、2年夏に全国準優勝、4年夏に全国優勝に貢献。大学日本代表のエースとしても活躍した。西武での通算成績は5試合に投げ0勝0敗、防御率2・84。1メートル78、77キロ。右投げ右打ち。

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