ハム矢野特別手記 最高の仲間に、温かいファンに、家族に、そして北海道にありがとう

[ 2018年10月11日 05:39 ]

パ・リーグ   日本ハム5―4ロッテ ( 2018年10月10日    札幌D )

<日・ロ>引退セレモニーで胴上げされる矢野(撮影・高橋茂夫)
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 ありがとう、北海道!9月28日に今季限りでの現役引退を表明した日本ハムの矢野謙次外野手(38)が10日、ロッテ戦の7回に代打で登場。現役最終打席で唐川から左前打を放った。15年途中に巨人から移籍し、右の代打の切り札として君臨した男は試合後に引退セレモニーも実施。スポニチ本紙に特別手記を寄せ、感謝の思いをつづった。

 現役16年、誰よりも努力して、ひたむきに、うそをつくことなく野球と向き合うことを心掛け、ここまでやってきた。そして最後の打席でヒットも打てた。7回は(西川)遥輝から始まり、(大田)泰示が(遊撃内野安打で)ヘッドスライディングでセーフになって…。いい場面をお膳立てしてくれた監督、コーチ、チームメート、そして直球勝負をしてくれた相手のロッテ、皆さんに感謝したい。

 (03年の)プロ入りから12年半を過ごしたジャイアンツでは勝利を義務づけられたチームの厳しさ、ファイターズではそれを踏まえて、心から楽しむことを学んだ。良いことも悪いこともあったけど、勝てば一緒に笑え、負ければ一緒に悔しがれる仲間ができた。それが一番の宝物。最高の仲間に出会えて、最高に幸せ者だと思う。

 ファイターズでの思い出はたくさんあるけど、(15年途中に)移籍して、すぐにお立ち台(※1)に上がれたのはうれしかった。インタビュー後に場内を一周していると女性ファンから「来てくれてありがとう」と言われた。最初は「え?」と思った。トレードで来たので、自分で希望したわけじゃない。でも北海道のファンは「来てくれて…」となる。心が優しくて温かい。「この人たちを喜ばせるために頑張ろう」と決意した瞬間だった。

 (大谷)翔平(現エンゼルス)とお立ち台に上がったこと(※2)は父親として誇らしかった。小学生の息子は翔平の大ファン。札幌ドームに観戦に来た時は、試合後のロッカーで遊んでくれた。去年10月に翔平がメジャー移籍を見据えて右足首を手術した数日後に(都内の)病院に息子と2人でお見舞いに行った。息子は「将来は僕もメジャーに行くから対戦してください」と話していた。改めて夢を与える、凄い選手だと思う。

 今年、ドラフト1位で入団した清宮も凄い選手になれる可能性がある。今年は2軍で接する機会も多かったけど、1軍で一緒だった7月の東京ドーム(10日、ソフトバンク戦)で、みんなが帰った後、ロッカーでいろいろ話した。「この世界にスターはたくさんいる。でも品格も持った本当のスターは少ない。おまえはなれるものを持ってる。だから謙虚に努力することを忘れるな」と伝えた。日本ハムは自由な雰囲気が売り。でも、はき違えると自分勝手とみられる。真っすぐ、大きく成長してほしい。そんな思いを僕なりに伝えさせてもらった。

 栗山監督や吉村GMは、組織を強くするために常に決断し、前に進めている。そんな人たちと接することができた4年間は必ず自分の財産になる。この経験を生かし、ファンに恩返しできるような第二の人生を歩みたい。打てない時でも、大きな声援をくれた。ファンの声援がなかったら、ここまで頑張ることはできなかったと思う。

 最後に。家族の存在は心の支えだった。好きな野球をここまでやらせてもらったこと、応援してくれたこと、本当に感謝している。心から、ありがとう。(北海道日本ハムファイターズ外野手)

 ※1 15年6月11日に札幌市内で入団会見。翌12日のDeNA戦に「6番・DH」で先発出場し、二塁打3本の猛打賞。お立ち台で「ファイターズ、最高!」と叫び、一気にファンの心をつかんだ。

 ※2 15年8月8日の楽天戦で9回に代打で同点適時打を放ち、延長10回に代打でサヨナラ打を放った大谷とともにお立ち台へ。普段はパフォーマンスをしない大谷を巻き込み、2人で「ファイターズ、最高!」と叫んだ。

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