旭川のカレー店、日本ハムとの絆…野球の楽しさ教えてくれた恩返しを

[ 2018年10月11日 10:10 ]

旭川のカレー屋「クレイジースパイス」の斉藤さん(撮影・高橋茂夫)
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 北海道旭川市に「オムカレー」が全国に広がるきっかけを作った有名店がある。日本ハムファンも多く足を運ぶ「クレイジースパイス」だ。オーナーの斉藤辰矢さん(54)は「男は生き様」がモットーの熱血漢。その真っ直ぐな生き方が道民球団との「絆」を生んだ。

 脱サラして札幌市内で大好きなカレー店を営む決意をしたのは23年前の95年。同駅周辺で物件を模索したが「家賃が高い」との理由で縁もゆかりもない旭川での出店を決めた。まさにゼロからのスタートで、地元で雇ったアルバイトの青年の「みなさんに知ってもらうため、冬もTシャツ姿で配達しませんか?」という提案を即採用。極寒の中、Tシャツ姿で自転車に乗って雪道を配達する姿が話題を呼び、すぐさま経営は軌道に乗った。

 出店から9年後の04年に日本ハムが本拠地を東京から北海道に移転。アルバイトの青年は学生時代にメジャー球団でインターンで働いていた経験を買われ、03年から球団に就職していた。北海道の初代監督でファンサービスも積極的に行ったトレイ・ヒルマン氏、メジャーから日本球界に復帰した新庄剛志氏らの活躍もあり、瞬く間に人気球団へと成長。自身も陸上競技に青春を捧げるなどスポーツの素晴らしさや人々に与えるパワーの大きさを知る斉藤さんはヒルマン監督が退任する07年に「道民に野球の楽しみを教えてくれたことへの感謝を形にしたい」と一念発起し、同じ市内に現在の店を建設した。

 内装はテキサス出身のヒルマン元監督が来日前に所属していたレンジャーズの赤と青をモチーフとしたログハウス風。評判を聞きつけた球界関係者らも足を運ぶようになり、すぐに店内は「お宝級」のグッズで埋まった。かつてのアルバイトの青年は現在、日本ハムでチーム統轄副本部長を務める岩本賢一氏。現1軍用具担当の枳穀涼介氏も過去に同店で働いていた縁もあり、遠征時は多くのチーム関係者が訪れる。大谷翔平(現エンゼルス)もチームに在籍していた昨年までは毎年来店し、今年も9月3日に計14選手が来店。近藤、上沢ら主力だけでなく、新人の清宮も足を運んだ。

 斉藤さんは「死ぬ日が退職の日」と語るなどカレーへの情熱を持ち続け、人との縁も大事にしている。店に集まる人々やグッズは、そんな信念が生んだ結晶といえる。

 「栗山監督にも感謝しかない。自分も道民のひとりとして夢を見させてもらっている。ファンの方々が少しでもチームを身近に感じる場所を提供することで恩返しになればと思っています」

 ファイターズが本拠地とする札幌ドームから北東におよそ140キロ。斉藤さんは感謝の思いを胸に、今日も半袖のTシャツ姿で厨房に立つ。(記者コラム・山田忠範)

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2018年10月11日のニュース