復活目指す老舗・野球用品メーカーの挑戦 楕円形状グリップの金属バットで勝負

[ 2018年10月12日 09:45 ]

黄色い部分が楕円形状になっているバット。グリップエンドも特殊な形状をしている
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 大リーガーの間で流行している楕円形状グリップのバット。グリップ部分が従来のような円柱ではなく、ヘッドの方から見ると楕円形になっている。グリップ力が増すことでよりバットに力が伝わりやすくなる構造だ。レッドソックスのペドロイアが有鉤(ゆうこう)骨骨折を防ぐために取り入れたのを皮切りに、現在のレ軍のリードオフマン・ベッツらが使用するなど輪が広がっている。

 その楕円形バットを日本で唯一展開しているのが「美津和タイガー」だ。懐かしく思う野球ファンの方も多いかもしれない。1947年に創業。丁寧な職人技で作り上げられた「虎印」のバットやグラブは、掛布雅之、落合博満ら名だたる多くの名選手に愛されてきた。85年に倒産の憂き目に遭うなど紆余曲折を経て、14年から野球用品の展開を始めた。

 その中でも特に競技人口の多い軟式野球向けに、大リーガー使用モデルと同じ形状を取り入れた金属バットが人気だ。学童野球や中学野球でも使用する選手が続々と出始めているという。人間工学に基づいて作られたグリップはしっかり握ることができ、力負けしないのが特徴。スイングスピードが上がっているという計測結果もあり、検証が続けられている。さらに故障予防にも効果的だ。通常の円柱グリップだと手のひらに余計な負荷がかかり続けることで空振りしても骨折する場合があるが、楕円形バットは手のひらにフィットするため負荷がかかりにくく、有鉤骨骨折などの予防も期待されているのだ。

 圧縮バットを日本で初めて開発するなど常に先進的なことに取り組んできたメーカー。楕円形グリップの金属バットもその「差別化」の一端であり、伝統を受け継いでいる。「誰かが使っているから、ではなく自分の体を知ってそれに合った道具を選んでほしい。選択肢を多く提供したい」と担当者。再復活を目指す老舗の挑戦は続いていく。(記者コラム・松井 いつき)

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2018年10月11日のニュース