“記者泣かせ”だった広島・黒田の大きな功績

[ 2016年10月21日 11:10 ]

練習前、笑顔を見せる黒田
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 広島市民球場の記者席は、バックネット裏のスタンド上段にあった。今から10年前、駆け出しの記者として巨人を担当していたから、広島には遠征でよく訪れた。

 今季限りでユニホームを脱ぐ黒田は、当時は150キロ前後の直球主体の投球だった。変化球は高速フォーク、小さく変化するスライダー、右打者の懐に食い込むシュート。記者席から最も球種が判別しにくい投手だった。

 メジャーでは球を動かす投球にモデルチェンジした。まともな回転の直球だけでは抑えられない世界だったのだろう。直球と球速が変わらないツーシームは、変化が小さいときもある。よくメジャーのテレビ中継を見ていたが、球種の判別はさらに難しくなった。

 昨年、日本球界に復帰すると「バックドア」や「フロントドア」という文字が紙面を飾った。左打者の外角ボールゾーンからスライダーを外角いっぱいのストライクゾーンに曲げるのが「バックドア」。左打者の内角ボールゾーンからシュートを内角いっぱいのストライクゾーンに曲げるのが「フロントドア」。メジャーでは浸透していた名称だったが、日本で広まったのは、黒田の偉大さを表していると思う。

 黒田の投球は、若手投手には最高の見本だったことだろう。スタイルを参考にした野村は今季16勝で最多勝を獲得。「黒田さんには、凄くたくさんのことを学ばせていただいた」と感謝した。球種の判別が難しい投手は、打者からすれば打ちにくいのは当然。同時に、記者泣かせでもあるのだが…。(記者コラム・川島 毅洋)

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2016年10月21日のニュース