男は黙って…プロ実働29年「サメさん」中嶋聡さんが持っていた“大きさ”

[ 2015年11月6日 09:08 ]

今季限りで現役を引退した中嶋聡氏

 「漢(おとこ)」は黙って背中で語る――。日本ハムでGM特別補佐に就任した中嶋聡さん。いや、「サメ」さん。プロ野球タイ記録の実働年数29年をマークし、今季限りで現役を引退した。他の選手にならって、なれなれしくもいつも愛称で呼ばせてもらっていた。出会ったのは15年前。記者が西武担当だった00年だ。以来、球場などで会うたびにあいさつに足を運んだ。会うのが楽しみだった。「サメさん」「おう!」。武骨ながら、優しさがこもった口調。いつも温かかった。

 あれは楽天が日本一に輝いた13年だった。遊軍記者として、楽天の山形遠征に同行した。仙台からの移動日は8月19日。Kスタ宮城での練習の取材を終え、原稿を執筆し、山形に到着したのはもう午後8時過ぎだった。夕食を。ホテルにチェックインする前に、駅前にあった焼き肉店に1人で飛び込んだ。「おう!どうした。久しぶりやな」。先客としていたのが、サメさんだった。

 楽天の対戦相手は日本ハム。兼任コーチのサメさんがいても不思議ではないが、ふと見ると少し離れたテーブルに体格のいい若者が3人座っている。サメさんの方をチラチラとうかがっている姿を見て、野球選手だとピンと来た。翌20日に天童市でイースタン戦が控えていたヤクルトの2軍選手だった。「みんな、サメさんにあいさつするんだ。ほらほら」。もちろん初対面。彼らは緊張しながら頭を下げ、サメさんは笑顔で応じていた。

 「じゃあな○○。俺、先に帰るわ」「はい。またあした球場で」。サメさんは食事を共にしていた関係者と一緒に先に席を立った。その直後だ。店員が近寄ってきて「お会計は、全員の分を中嶋さんがお済ませですので…」。記者だけでなく、初めて会ったヤクルトの選手の分まで。男は黙って、を地でいく格好良さだ。「おいみんな。中嶋さんがおごってくれたんだから、どんどん食べろよ」。3人は驚きながらも、うれしそうに肉を焼いていた。

 86年ドラフト3位で阪急ブレーブスに入団。「最後の阪急戦士」であり、昭和の時代に入団した最後の選手でもあった。その広い背中、そしてたたずまいには、古き良き昭和の雰囲気が漂っていた。「どんどん食べろ」。ヤクルトの選手がいっぱい食べたおかげで、実はサメさんが払ってくれた分より会計は1万円ほどオーバーした。その分は記者が払った。男は黙って、をまねしてみた。格好良さ、は及びもつかないが。(鈴木 勝巳)

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