宣誓は石巻工の阿部主将「全国にメッセージ発信する使命」

[ 2012年3月16日 06:00 ]

<センバツ組み合わせ抽選>選手宣誓の大役を引き当て、どよめきの中、壇上へ向かう石巻工・阿部翔人主将

第84回選抜高校野球大会組み合わせ抽選会

 これも運命の巡り合わせか。出場32校による抽選で、1校だけに与えられる選手宣誓。引き当てたのは石巻工の阿部翔人主将だった。場内からは、この日一番の大きな拍手。被災地の代表として「自分には選手宣誓で、甲子園から全国にメッセージを発信する使命があるのかなと感じた」。拍手の意味を肌で感じ取り「高校球児にできることは、諦めないで全力でプレーすること。そういう気持ちを代表して伝えたい」と話した。

 東日本大震災の直後に開催された昨春のセンバツは、創志学園(岡山)の野山慎介主将の感動的な宣誓で幕を開けた。「こういう宣誓が自分にできるのかな、と思っていた」。石巻工では約7割の部員が震災の被害を受けた。阿部自身も自宅は1階天井まで浸水し全壊。プレーを録画したビデオやユニホームも泥に埋まった。1年が過ぎ、復興元年に迎えるセンバツ。今度は自身が大役を担う。「日本が一つになって、復興に向けて頑張っていこうというのを発信したい」と力を込めた。

 対戦相手は昨秋の明治神宮大会8強の神村学園(鹿児島)に決定した。抽選会後には昨年5月にボールを寄付してくれた春日丘(大阪)と練習試合を実施。試合前には春日丘ナインから、センバツ行進曲のAKB48「Everyday、カチューシャ」の音楽に合わせてダンスの出迎えを受け、練習量が少ない石巻工のために合同練習もしてくれた。温かいもてなしに松本嘉次監督は「涙は枯れたはずだったけど、歓迎に泣いてしまった。野球の絆は凄い」と大感激。「甲子園では思いを込めて一生懸命プレーしたい」と恩返しの白星を届けることを誓った。

 試合のある22日のちょうど1年前は、震災後の泥やがれき除去のためにナインが集合した日だ。被災地へ、そして全国へ、さまざまな思いを込めて戦う今大会。その幕開けに、阿部が力強いメッセージを浜風に乗せて届ける。

 ▼昨春センバツの選手宣誓 創部1年目で史上最速の甲子園出場を決めた創志学園の野山慎介主将が担当。冒頭では95年の阪神大震災にも触れ、東日本大震災の被災者へ向けて「人は、仲間に支えられることによって大きな困難を乗り越えられると信じています。生かされている命に感謝して、全身全霊でプレーを」と宣誓。熱いメッセージが感動を呼んだ。

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