羽生九段の「予言書」!?「りゅうおうのおしごと!」再現の一手出た 作者「昔の車が凄い改造を…」

[ 2023年1月9日 05:00 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局第1日 ( 2023年1月8日    静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )

アニメ「りゅうおうのおしごと!」の原作者、白鳥士郎氏が8日、ツイッターにアップした主人公の九頭竜八一(左)と「名人」の後ろ姿の設定画

 羽生九段が繰り出した「一手損角換わり」が、将棋を題材とするライトノベル「りゅうおうのおしごと!」5巻での展開と同じで「まるで予言書だ」と話題になった。2017年に発売された同巻は舞台こそ竜王戦だが、タイトル戦の第1局初日と設定も同じ。一手損角換わりを指したのが「タイトル通算100期を目指す伝説の棋士」で最年少タイトル保持者と戦う挑戦者と、この日の藤井―羽生戦に酷似している。作者の白鳥士郎氏は本紙の取材に「オールドファンも新規ファンも楽しめる、ワクワクする手でした」と興奮を語った。

 白鳥氏は「2008年に渡辺明さんに羽生さんが挑戦した竜王戦を下敷きにしています。この一手で渡辺さんの勝負勘を破壊し、羽生さんが勝った印象でした」とした。「まさか、AI全盛の令和の将棋でこの手が出てくるとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。

 一手損角換わりは、ラノベ執筆当時には既に「コンピューターならめったに指さない手」とされていたという。意外性も込めて登場させたが、「5年前にアニメとなったときは“タイトル戦でこんな手が出るわけない。将棋を分かっているのか”と叩かれました」と振り返った。AI全盛の時代だからこそ、不気味さが際立つ妙手。「まるで昔の車が、凄い改造をしてレースに出てきたようなワクワクがある」と声を上ずらせた。

 「りゅうおうのおしごと!」は、16歳の主人公が竜王という設定。執筆を始めた2015年には現実離れした設定だったが「その後、藤井さんの快進撃がありました。“そんなの書いたらウソくさい”とブレーキを踏んでいたら、作品が追い抜かれてしまいオロオロしてます」と苦笑い。

 ラノベでは、第1局は羽生を思わせる“伝説の棋士”が勝利しているが、今回の王将戦第1局も「羽生さんに勝ってほしい」と期待。破竹の勢いで勝利を重ねる藤井の強さを認めた上で「ここで藤井さんが先手で負ければ、分からなくなる。羽生さんが立ちはだかれば、将棋界はさらに面白くなる」と語った。

 ▽りゅうおうのおしごと! 白鳥士郎氏作で、2015年からGA文庫(SBクリエイティブ)で刊行のライトノベル。既刊19巻。主人公・九頭竜八一は16歳で竜王となる設定。その後、大スランプに陥りながらも立ち直っていく。藤井が16年10月、14歳2カ月でプロとなり、次々に記録を更新していくにつれ「現実に、負けるな。」などのキャッチコピーで話題に。16年、将棋ペンクラブ大賞で文芸部門優秀賞を受賞。18年1月、アニメ化。

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