羽生九段 △3五銀の飛車取り 最先端の将棋から経験値の高い将棋へ誘導

[ 2023年1月9日 05:26 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局第1日 ( 2023年1月8日    静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )

A図
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 【関口武史・第1日のポイント】開幕局は藤井王将の先手で始まった。本シリーズは羽生九段の後手番局の作戦に注目が集まる中、△8八角成と「一手損角換わり」の変化球を早々に披露。対して藤井は早繰り銀の作戦を明示、午前中から▲3五歩と開戦の火ぶたが切られた。

 羽生も△7五歩と応戦し、▲3四歩には△4四銀と強気に反発、戦局は盤面全体に広がった。銀交換の後、先手が飛車先を交換し37手目▲2六飛とバランスを取り昼食休憩に入った。

 ここで自然な△7六歩は以下▲同銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七金△8二飛▲8三歩△同飛▲4三銀の強襲がある。一触即発の変化が潜んでいる中、昼食休憩明け、羽生が選んだ手は△3五銀(A図)の飛車取り。△7六歩を見せ球にしながら局面を複雑化し、戦いの流れを鈍化した一手である。最先端の将棋から離れ、羽生にとって経験値の高い将棋に誘導したのが印象深い。

 この手を境に午後は一転、長考合戦となった。進んだ手数はわずか6手、藤井王将は76分、70分と連続長考、羽生の封じ手の消費時間は101分。近年は、終盤に時間を残す戦略のため1日目から進行が早い展開が多いが、本局、両者考慮を重ね封じ手を迎えたことに懐かしさを感じた将棋ファンも多いだろう。 (スポニチ本紙観戦記者)

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