羽生九段「隠し玉」一手損角換わり 後手実質2手損も…完璧に指せば先手の動きマイナスに誘導

[ 2023年1月9日 05:00 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局第1日 ( 2023年1月8日    静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )

熟考する羽生九段
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が挑む将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負は8日、静岡県の掛川城二の丸茶室での第1局で開幕した。7期ぶりに登場した後手の羽生は「隠し玉」とも言うべき「一手損角換わり」を選択。無双の王者にやんわり揺さぶりをかけた。

 「一手損角換わり」は後手の戦法。将棋は元々、先に駒を指せる先手の方が有利とされるが、この作戦は先手が角換わりで銀を一歩前進させることまでできるため、後手は実質的に“2手損”になるという見方ができる。

 狙いは、一見有利に見えた先手の2手指し進める動きを、結果的にマイナスの働きにさせること。ただ、序盤の手損が大きいため、後手は完璧に指さないと一気に持っていかれる。一方的な負けを喫する危険性もはらんでいる。

 元A級棋士の淡路仁茂九段が生みの親とされ、2000年代中盤に一時流行。戦術書を自ら執筆している糸谷哲郎八段が用いることで知られるが、高度な戦法のため指す棋士は多くない。

 淡路九段はこの戦法で、新手や妙手を指した者や、定跡の進歩に貢献した者に与えられる升田幸三賞を2006年に受賞している。

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