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サケては通れぬ復興支援 セミナーで自然産卵魚増やすお手伝い

[ 2018年11月3日 13:49 ]

セミナーには2日間でのべ18人が参加
Photo By スポニチ

 【釣遊録】「今度現地へ行くことがあったら連れてってよ。私は東北に縁がないから、応援したくても、踏み込めないから」という友人の声でこのイベントは始まりました。「そういう人たくさんいると思うから」と言われたので一般募集もして、福島県楢葉町木戸川サケ復興応援サーモンセミナーが始まりました。

 原発事故が起きた翌年の春、青梅信用金庫がセミナーを開き、寄付を募って「木戸川のサケの復興のためにお使いください」と楢葉町に送りましたが、漁協へは下りてきませんでした。

 やはり現地へ行かなくてはと思い、個人的には12年夏から行っています。セミナー開始は15年からで、今年で4回目です。

 なぜ木戸川なのか?それはこの川に回帰するサケの特質です。まず食からいうと、川に上がっても身が白くならず、卵を持ったメスでさえ、身が赤くておいしいんです。アスタキサンチンという赤み成分が多いためです。マダイなどでは表皮につくので体色は赤くなりますが、身は赤くありません。

 また釣りに関してはとても攻撃的な魚が多いことです。つまりルアーやフライで釣りやすいのです。多くの河川ではサケは目の前に無理やり突き出すように流さないと釣れませんが、ここでは投げて泳がしていると追いかけてきて食いつきます。

 木戸川は盛期には10万匹を超える遡上(そじょう)があり、ガンガン釣れました。しかし避難から孵化(ふか)事業再開までに時間が空き、昨年度は自然産卵魚のみの回帰で3414匹でした。今年はやや多いらしいですが、それでも釣獲調査を再開するにはほど遠い数字です。来年度からは放流事業を再開した時の4歳魚が帰ってきますから期待は大です。

 私たちは現地で漁協の方々と、一緒に川に入り、合わせ網漁を手伝いました。そしてサケを捕獲するのです。釣りではありませんが楽しくないわけがありません。

 サケは水産資源保護法で一般人は取ってはいけないことになっていますので、あらかじめ漁協から捕獲従事者申請をしていただきました。松本秀夫組合長の特別な計らいで実現しているのです。そういう意味では特殊なイベントと言えましょう。遊ばせてもらっているので恐縮ですが、いつも「来てくれてありがとう」と漁協の皆さんに笑顔で歓迎を受け、続けていてよかったと思います。

 翌日は捕獲カゴに入った魚を手づかみで生け捕り。そのあと採卵、受精もお手伝いしました。参加者みんなで2万粒ぐらいでした。この卵からかえったサケ稚魚が来春元気に泳いでいってくれることを願います。 (東京海洋大学客員教授)

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