ガーシー容疑者の弁護人 猿之助容疑者逮捕で見解、殺人罪ではなく自殺ほう助容疑のワケ 今後の見通しは

[ 2023年6月27日 15:32 ]

市川猿之助容疑者を乗せていると見られる車両が目黒署に入る(撮影・木村 揚輔)
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 元参院議員のガーシー容疑者(本名・東谷義和)の弁護人を務めるという高橋裕樹弁護士が27日、自身のYouTubeチャンネルを更新。歌舞伎俳優・市川猿之助容疑者(47)が母親の自殺を手助けしたとして、警視庁に自殺ほう助容疑で逮捕されたことについてコメントした。

 逮捕状執行前の時点で、各報道と過去の判例を踏まえた上で解説。

 猿之助容疑者は5月18日、自宅の半地下で意識がもうろうとした状態で倒れているのが発見され、2階のリビングで仰向けで倒れていた歌舞伎俳優で父の市川段四郎さん(76)と母の喜熨斗(きのし)延子さん(75)はいずれも死亡が確認された。段四郎さんは2012年に病気をして以来、歌舞伎の舞台から遠ざかっていた。自宅で療養を続けていたとみられ、延子さんが看病していた。警視庁は今後、段四郎さんの死についても捜査を進める。

 高橋氏はなぜ殺人罪ではなく、自殺ほう助容疑なのかという点について「簡単に言うと、証拠がないというのが一番大きい所かなと思います。本人が自殺したいという願望があったとしても、殺人罪になることはあります」とし、2017年に座間で起きた連続殺人事件の判例を取り上げた。

 同事件は、神奈川県座間市のアパートの一室で、クーラーボックスの中から切断された頭部など9人分の遺体が発見された。犯人の白石隆浩はSNSを通じて知り合った女性8人、男性1人を殺害して解体していたことがわかり、その残虐性が世間を震撼させた。白石被告は死刑判決を受けた。

 被害者は自殺希望があったとして弁護側は自殺ほう助を主張していたとされるが、裁判所は一審で殺人と認定。これについて高橋氏は「一番の原因となっているのは自殺願望があったとしても、殺害する行為に及んでる時点で被害者とされる人たちが抵抗していた痕跡があるというのが決定的な証拠になっています」とした上で、「抵抗があったかというのが今回も大事になってくる」と述べた。

 また、両親は本当に服薬だけで亡くなったのか。司法解剖の結果、向精神薬中毒の疑いと公表されたが「(中毒の)典型的な症状は呼吸器の機能低下なわけです。窒息もある意味呼吸ができなくなっているので症状としては似ている所がある。再度司法解剖を行った結果、窒息と矛盾しないという司法解剖がなされる可能性もあります」とし、死因が服薬なのか、猿之助容疑者が両親にビニール袋をかぶせたことなのかが今後を大きく左右するとした。

 猿之助容疑者はここまで「薬を飲んだ両親にビニール袋をかぶせた」とも聴取に語っているが、薬のパッケージとともに、ビニール袋も見つかっていない。「呼吸が苦しくなってビニール袋を破ろうとかの抵抗の痕跡がある可能性もある。そうなると袋には形跡が残っていてもおかしくない。痕跡が残っているとなると、自殺ほう助ではなくて殺人ではないかという可能性も出てきます」とした。さらに両親に自殺の動機があったのか、本心で自殺を臨んでいたのかが焦点となると指摘した。

 一方、両親の発見に至るまでの経緯について「それを語ることができるのが猿之助さんだけだというのがこの手の事案の難しい所です。証拠がない関係上、当然殺人も視野に入っているわけですけれども。証拠上は現時点では、自殺をしようとして自分で薬を飲んだ、それに対して薬を提供するなどしてサポートした、ほう助したというところでの自殺ほう助罪での逮捕しか今はできないという判断なのかなと思います。実際の裁判でもそういった証拠しかないのであれば、殺人の可能性があるとしても自殺ほう助罪にしかならないのではないか」と見解。

 今後について「今回はお母さんのみについての逮捕ですので、今後は当然お父さんに対しての自殺ほう助ということもあり得るかなと思います。すぐ起訴されるのではなくて、おそらく処分保留で釈放、一旦釈放になって、即お父さんに対する自殺ほう助で再逮捕して、2人分の罪についての逮捕・拘留期間を経たうえで起訴されることになると思います。ここで何罪で起訴されるのか。自殺ほう助、殺人なのか。または嘱託殺人ということで、お父さんお母さんの意向が働いているとすればその可能性もある」と見通しを示した。

 自身も過去の弁護で取り扱ったことがあるといい「自殺ほう助罪や嘱託殺人については、6カ月以上7年以下の懲役または禁錮ということで決して軽くありません。なおかつ、1人ではなく2人です。2人以上故意に殺害した場合には永山基準などを踏まえると死刑もありうるというかなり重い罪になる。一方で、自殺ほう助は死刑は当然ありませんけれど、相応の重い判断がなされる可能性があります」と述べた。

 猿之助容疑者の辛い胸中に両親が同情したという筋書きも考えられるが「経緯があるからと言って、ただちに情状酌量で執行猶予となるかといえば必ずしもそうではない」。過去、介護殺人などで相手の承諾を得た経緯があって殺害しても実刑になったケースがあったという。「裁判所が指摘したのは、本人が将来を悲観していたり、死にたいと言っても真に受けるんじゃなくて、親族として止めるべきだったでしょうと。本人が強い自殺希望があったとしても、周りとしてまず止めて、方策を尽くしてべき、SOSを出すべきだったのに、それを本人の言い分をそのまま受け入れて安直に結果を実現してしまったという経緯には汲むべき部分がとぼしいということです」と解説。

 猿之助容疑者は緊急搬送された5月18日当日、警察の聴取に対し、事件前日の同月17日に家族で話し合い「死んで生まれ変わろうと家族で話し、両親が睡眠薬を飲んだ」という主旨の話を説明。この家族会議が行われた日は自身のパワハラやセクハラ疑惑などを報じた女性セブンの記事内容が猿之助側に知らされたタイミングだった。

 高橋氏は「誰が自殺しようと言ったのか、きっかけが誰なのか」「全員が全員がただちに自殺の選択肢になったわけではないのが普通だと思う。どちらかが説得しなかったのか、次善の策はなかったのかというところについても経緯が重要になってくる」とした。

 薬や袋を準備していたのは一体誰だったのか。両親は亡くなっただけに「当時の状況を説明することがもはやできない。現場に残っている客観的な証拠と猿之助さんの話、その話と矛盾する証拠があるのか。そこが問題になっていくでしょうから警察、検察側としては攻め手を欠く可能性もある。証拠の廃棄によって詰め切れないと。猿之助さんの話を前提にして事実を認定していくしかないかと思います」と指摘した。

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