ロジャー・テイラー 新譜「アウトサイダー」の中のロック

[ 2021年10月6日 08:30 ]

ニューアルバム「アウトサイダー」を発売したロジャー・テイラー
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】ロックに年齢は関係ない。若くてもできない人はできないし、年を重ねてもできる人はできる。それは生まれ持った魂によるものだろう。ロジャー・テイラー(72)のニューアルバム「アウトサイダー」を聴くと、そんな思いが強くなる。

 力強いドラムで始まる3曲目「モア・キックス」。どちらかと言えば内省的な雰囲気の前2曲から一変し、ぐいぐいと前に突き進んでゆく。ドラムと管楽器の音の出し合い、途中でのテンポの変換、ドラムとギターの溶け込み具合が気分を高揚させる。鋭角的なボーカルが胸に突き刺さる。

 ロジャーは「いつもの僕らしい曲。模範的なロックン・ロール。ワイルドだった時代、刺激を求めていた時代を振り返っているんだと思う」と解説する。

 思い出したのは、1970年代にクイーンのアルバム「オペラ座の夜」を初めて聴いた時のこと。3曲目「アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー」で、ロジャーのボーカルの激しさに驚かされた。「ボヘミアン・ラプソディ」などを歌うフレディ・マーキュリーとは異質のロック色。その後のライブで「伝説のチャンピオン」のサビを高音で歌う時や、ソロとしてレッド・ツェッペリンの「ロックン・ロール」をカバーして歌う時などにも、その色合いを感じた。

 ソロ活動にも積極的だった。最初のアルバム「ファン・イン・スペース」を発売したのは、今から40年前。もともと楽曲の創作意欲が旺盛で、クイーンのアルバムに収録されなかった曲が多数あり、1人でいくつもの楽器を演奏できる利点もあった。

 今作「アウトサイダー」は、2013年の「ファン・オン・アース~地上の愉楽」以来、8年ぶりのソロアルバム。これまでのように、長年の友人やコラボレーターたちの助けをほんの少し借りながら、全曲の作詞・作曲、プロデュース、歌唱、演奏を自ら行った。

 ロジャーは「『秋めいた』という形容が、このアルバムをうまく言い表している。ややノスタルジックで、切なくて、かなり大人びている。ここ2、3枚の僕のソロアルバムと比べると、少し円熟味が増した感がある」と話す。

 1曲目「タイズ」と最終曲「ジャニーズ・エンド」がいずれも「死」に関する作品になっていることもあり、全体を通じて「秋めいた」気分に浸ることができる。

 とはいえ、3曲目「モア・キックス」で体現したようにロック魂は健在で、現在、英国ツアーの真っ最中。ロジャーは「みんなに楽しんでもらいたいと思っている。この先あとどれだけ僕がこれをやっていられるかは分からないけれど、今はまだやれる。だから、その機会を存分に生かそうと思っているんだ」と語る。

 いつの日にか日本公演を実現してもらい、「Radio Ga Ga」などの熱唱を聴きたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2021年10月6日のニュース