“伝説のロックギタリスト”エディ・ヴァン・ヘイレンさん、天国へ…革命ライトハンド奏法

[ 2020年10月8日 05:30 ]

エディ・ヴァン・ヘイレンさん=2004年(AP)
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 革命的な演奏で世界のロックギタリストに多大な影響を与えた米ロックバンド「ヴァン・ヘイレン」のリーダー、エディ・ヴァン・ヘイレンさんが6日、咽頭がんのため死去した。65歳。オランダ出身。「ライトハンド奏法」などの多彩な技法と速弾きは当時の常識を覆し、近代ロックの進歩に多大な足跡を残した。

 史上屈指のギター・ヒーローが旅立った。長男でベーシストのウルフギャング・ヴァン・ヘイレン(29)がこの日、ツイッターでエディさんの死を報告した。

 00年に舌がんを発症し、一度は完治を宣言したが、ここ10年ほどで再発と転移を繰り返し、16年以降はバンドでの活動はなかった。現地の報道によると、この5年は放射線治療のため米国とドイツを行き来。昨年11月から症状が悪化し、入退院を繰り返していた。

 55年にオランダで生まれた。10代でロックに興味を持ちドラムを始めた。その後、共にバンドを組む兄のアレックス(67)と楽器を交換。ギタリストの道を踏み出した。

 デビュー時には既に圧倒的技量を誇っていた。初アルバム「炎の導火線」収録の「暗闇の爆撃」では、右手指で弦を叩いて音を出す高速の神業テクニック「ライトハンド奏法」や、ピックで弦をこすり上げる「ピック・スクラッチ」、ギターのアームを大胆に使ったビブラートなどを駆使。「どうやって弾いてるんだ?」と音楽ファンの度肝を抜いた。

 「その音色は、従来のロックギターとは一線を画すもので、60年代のギタリスト、ジミ・ヘンドリックス以来の革命者と呼ばれた」と音楽関係者。世界中のプレーヤーがこぞって後を追い、エディさんの技は80年代以降スタンダードとなった。「みんな彼の演奏をまねる。でも誰一人、同じ音は出せない」と語る音楽評論家もいる。赤いボディーに白と黒のラインを不規則に塗装した改造ギター「フランケン」をまねるアマチュアも続出。日本でも当時、学校の文化祭などで、この柄を模したギターがよく見られるようになった。

 マイケル・ジャクソンさんのヒット曲「今夜はビート・イット」(83年)のメインギターを担当したことでも知られ、キーボードを導入した84年の「ジャンプ」は現在も、日本のCM曲に起用されるなど普遍的人気。92年にグラミー賞を受賞した。アルバムの全世界総売り上げは8000万枚以上。大衆にも玄人にも支持された。

 レコード会社関係者は「18年ごろから黄金期メンバーでの再結成が持ち上がっていた」と話し「もうあの神業が見られないと思うと無念」と惜しんだ。

 ◆エディ・ヴァン・ヘイレン 1955年1月26日生まれ、オランダ出身。67年に米カリフォルニア州パサデナに移住。クラリネット奏者だった父親の影響で幼少期からピアノやバイオリンを演奏。72年に兄のアレックスらとバンドを結成。その後、現在のバンド名に改め78年にデビュー。81年に米女優のヴァレリー・バーティネリと結婚するも07年に離婚。同年、体調不良でリハビリ施設に入所。11年の「ローリング・ストーンの選ぶ史上最も偉大な100人のギタリスト」で8位に。

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