伊藤咲子 アイドル同士の“禁断の恋”今ではよき相談相手に

[ 2016年5月22日 12:16 ]

「ひまわり娘」でデビューした伊藤咲子はひまわりの季節に行う歌手活動に向け意気揚々

大人の魅力 伊藤咲子(上)

 かつて「ひまわり娘」で人気アイドルとして活躍した伊藤咲子(58)は、「今は心から歌に感謝しています」と言う。オーディション番組「スター誕生!」でデビュー、その後、結婚、闘病、離婚などさまざまな出来事があった。再びステージに立つ喜び、サッコに笑顔が戻ってきた。

 歌手を夢見る中学生がいた。いつもクラスメートを前に、小柳ルミ子の「漁火恋唄」を歌った。「スター誕生!」(日本テレビ)から森昌子が「せんせい」でデビュー。自分と同い年の女の子だと知った。

 「あの時、年齢が一緒の昌子ちゃんが出て来てくれたおかげで遠い世界が一気に近くなったように感じましたね。学校の友達も“伊藤ちゃんも挑戦しなよ、きっと合格できるよ”ってみんなで応援してくれました」

 仲良しの一人がはがきを机の上に置いた。「1枚じゃダメ、念のため2枚出しておこうよ」。学校帰り赤いポストに投かんした。半年後、「スタ誕」の予選会の通知が届いた。なんと5日後の日曜日。「えっ、何を歌えばいいの」。ドキドキしながら会場のよみうりホールへ行った。その時、横森良造さんのピアノ伴奏で歌ったのが、♪だれにも言わずに裏木戸を抜けて~。1次審査、2次審査を通過し、テレビに出場することになった。「本当に夢のようでした。信じられなかったです」

 でも、現実は甘くなかった。阿久悠さん、松田トシさんらの審査員を前に緊張もあって、101点。合格ラインの250点には大きく及ばなかった。ところが、番組関係者から「もう一度、次の日曜日の予選会に来てください」と言われた。両親は「何度も恥をさらすんじゃない。絶対にダメ。諦めて勉強しなさい」と猛反対。「これが最後」と泣きながら許してもらい、朱里エイコさんの「見捨てられた子のように」で再チャレンジ。370点を超す高得点を叩き出した。

 74年4月、阿久悠さんが作詞した「ひまわり娘」でデビュー。日本中がオイルショックの影響で暗く沈んでいた。「先生(阿久さん)がこんな世の中だから明るい歌をとおっしゃって、元気がトレードマークの私を見て書いてくれた曲です」。その後のヒット曲「木枯しの二人」、「乙女のワルツ」、紅白歌合戦で歌った「きみ可愛いね」は、全て阿久さんが詞を手掛け、三木たかしさんが曲をつけた。

 2人の恩師からはいつもこう教えられた。「サッコ、自分の感じたままに歌えばいいんだよ。学校に好きな男の子がいるだろう。その気持ちで歌えばいいんだ」(阿久さん)「プロはプロ意識を常に持ち続けなさい。ファンの夢を壊すことがないように歌っている時も普段の生活でも」(三木さん)

 伊藤は今でもこの言葉を忘れることはない。

 アイドル同士の恋。「イルカにのった少年」の城みちるとの交際が騒がれたこともあった。人気者の恋愛が許されなかった時代。噂や中傷が飛び交った。

 「普通の男の子と女の子ですからね。でも、お互いに仕事が忙しくて2人で食事に行ったことも数えるほどしかありません。待ち合わせて学校へ行くとか、番組で顔を合わせるとか、今振り返れば本当にいい思い出です」。初恋は4年で自然消滅した。今では互いによき相談相手になっているという。

続きを表示

この記事のフォト

2016年5月22日のニュース