エンゼルス・大谷 居合抜き8号 侍魂WBC再現“膝つき”豪快すくい上げ

[ 2023年5月12日 02:30 ]

ア・リーグ   エンゼルス4-5アストロズ ( 2023年5月10日    アナハイム )

<エンゼルス・アストロズ>9回、2ランを放つ大谷(撮影・会津 智海)
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 エンゼルスの大谷翔平投手(28)が10日(日本時間11日)、登板翌日のデーゲームとなったアストロズ戦に「3番・DH」で出場。9回に低めのカーブをすくい上げ、右翼席に8試合ぶりの8号アーチをかけた。3月のWBC強化試合でも披露した左膝を落とし、侍が刀を抜くようなスイング軌道で驚きの一発。自己最多46本塁打でタイトル争いも演じた21年も連発した曲芸打ちを今季初めて披露し、今後の一発量産を予感させた。

 見逃せばボール球だった、低めのカーブ。スイング直後、大谷の左膝は地面につきそうなほど、体勢は崩された。誰もが「凡退か…」と思ったスイングから放たれた打球は、角度31度で青空にアーチを描き、右翼席に着弾。今季初となる“曲芸打ち”を決めた。

 2―5の9回無死一塁で5月初アーチとなる8試合ぶりの8号2ラン。WBC米国代表でも守護神を務めた右腕プレスリーに対し、空振り三振に倒れた前日と同じ1ボール2ストライクから雪辱した。まるで腰を落とした侍が刀を抜くようなバット軌道での一発。三塁ベンチに戻ってナインから恒例の兜(かぶと)の儀式で祝福されると、刀ではなく、ピストルを右腰のホルダーに収めるようなパフォーマンスも披露した。

 あの熱狂を思い出したファンも多いだろう。“侍打ち”は3月6日のWBC強化試合だった阪神戦でも披露。その時は左膝を地面についていたが、ほぼ同じフォームで一発を決めた。その後に得点は奪えず敗戦したが、地元放送局バリースポーツ・ウエストの解説マーク・グビザ氏は「どうしてあそこまで飛ばすことができるのか分からない」と困惑。大リーグ公式サイトのブレント・マグワイア記者も「ストライクゾーンの下のカーブを408フィート(約124メートル)も飛ばした」と驚きをもって伝えた。

 前日は7回3失点と力投も今季初黒星。ナイター登板翌日の疲れも見せない鉄人ぶりで、これで今季デーゲームは53打数20安打で打率・377、5本塁打、14打点となった。レンジャーズ、アストロズと続いた同地区ライバルとの本拠地6連戦は、いずれも負け越して2勝4敗。それでもフィル・ネビン監督は「この2球団がベストであれば、どの球団とでも争えると感じている」と前を向く。故障者続出で苦しい戦いを強いられながらも貯金2で2位につけている。

 鍛え上げた肉体と柔軟性を駆使し、どんな体勢でも強い打球を飛ばすことができるのが大谷の最大の強み。終盤までタイトルを争い、自己最多46本塁打を放った21年も驚きの体勢やバット軌道で一発を量産した。8本塁打はリーグ7位タイ。この日の快音は、一発量産への号砲ともいえる。(笹田幸嗣通信員)

 ▽大谷の片膝つき弾 3月6日に京セラドームで行われたWBC強化試合の阪神戦に「3番・DH」で出場。同1日に米国から来日したばかりで「時差ぼけで体調100%ではなかった」が、“日本凱旋試合”で2本塁打を記録した。3回は左膝をつき、刀を抜いたようなスイングで低めのフォークを中堅右の2階席まで運ぶ3ラン。体勢を崩され、さらにバットが折れても軽々とスタンドインさせるパワーで、ファンだけでなく両軍選手の度肝も抜いた。

 【大谷21年の曲芸打ち】 ≪グリーンモンスター越え弾≫ 敵地フェンウェイ・パークで行われた5月14日のレッドソックス戦で逆方向の左翼にある名物の巨大フェンスを越える11号ソロ。ナックルカーブに体勢を崩されながらも最後は右手一本で運んだ。左打者の同フェンス越えは日本選手3人目のレア弾。

 ≪悪球打ち弾≫ 同17日の本拠地インディアンス(現ガーディアンズ)戦で肩の高さの完全なボール球を右翼席中段に運ぶ2戦連発の13号3ラン。人気野球漫画「ドカベン」の岩鬼正美をほうふつさせる「悪球打ち」で日本選手初となる本塁打数両リーグ単独トップに浮上した。

 ≪ゴルフスイング弾≫ 7月18日の本拠地マリナーズ戦で膝より下の低めのスライダーをゴルフスイングのようにすくい上げ右中間最深部に運ぶ34号2ラン。本塁打競争出場後に不振に苦しみ、後半戦初アーチだった。

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