「楽しい」を前面に――満面の笑みが放つ青春の美しい輝き、これぞ女子野球の魅力

[ 2022年8月3日 07:00 ]

<開志学園・横浜隼人>6回、盛り上がる横浜隼人ナイン (撮影・後藤 大輝)
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 「私たちは、楽しくて仕方がないんです」

 誰が言ったわけでもないが、全員の顔にそう書いてあるように、筆者には見えた。

 2日に行われた第26回全国高校女子硬式野球選手権決勝の開志学園―横浜隼人。全国でたった2校しか立つことが許されない聖地でタイブレーク延長10回という熱戦の末、横浜隼人が頂点に立った。男女に優劣などもちろんないのだが、男子にない魅力があったのも確かだ。

 男子の取材でもよく「笑顔で」「楽しんで」ということは聞く。実際、そうしている選手も多く、彼らは彼らで全身全霊でプレーしている。しかし、こういう表現が的確かどうかわからないが、全国の頂点が懸かった緊張感のある試合にもかかわらず、彼女たちは男子よりも“表現力”がずば抜けていた。

 一つのアウトを取るたびに、まるで3アウトチェンジになったかのように近くの守備位置の選手とグラブでタッチ。3アウトチェンジになれば、試合に勝ったかのようにベンチ全員が笑顔のハイタッチで出迎える。好プレーや安打にはガッツポーズ。そんなに楽しそうにやっている高校生を見て、応援したくならないわけがない。

 もちろん男子の場合、そもそもこういった行為が“御法度”となっているという側面もある。日本高校野球連盟・審判規則委員会が編纂した『高校野球・周知徹底事項』の<マナーについて>に次の項目がある。「喜びを誇示する派手なガッツポーズなどは、相手チームヘの不敬・侮辱につながりかねないので慎む」。これについて当欄で是非を問うつもりはないが、少なくともこの試合を見て、彼女たちの行動が相手への敬意を欠いているとは、筆者には到底、思えなかった。満面の笑みが放つ青春の美しい輝きが、いつまでも余韻を残した。

 男子との力量差は確かにある。それでも、見ている者の心を動かす多くの要素があったのもまた事実。「楽しい」を前面に――これこそが女子野球の魅力だ。(記者コラム・北野 将市)

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2022年8月3日のニュース