【内田雅也の追球】3つの犠打に見るそれぞれの意味

[ 2022年3月12日 08:00 ]

オープン戦   阪神6-1中日 ( 2022年3月11日    甲子園 )

<オープン戦 神・中> 初回無死一塁、糸原は犠打を決める (撮影・平嶋 理子) 
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 阪神が記録した犠打3個には、それぞれに意味があった。感じたままに書いてみる。

 1回裏、近本光司が安打で出た無死一塁、糸原健斗は初球、一塁前に送りバントを決めた。オープン戦8試合目にして初めての送りバントで、初の犠打が記録された。

 この作戦を見たとき、誰もが「開幕近し」と思ったことだろう。開幕まで2週間。頭では分かっていても、実感として肌で感じることが大切である。ベンチがこれまで自由に打たせていた打者に送りバントを命じたことで、気が引き締まったのではなかろうか。

 勝敗無関係といえ本番態勢。青柳晃洋と大野雄大のエース同士が先発で僅差勝負が見込まれる。1点の重みを再認識させる効果もあったろう。

 糸原が初球、一発で見事に転がし、後に4番・佐藤輝明の犠飛で先取点を奪えた。バントが実を結んだのは喜ばしい。

 気になったのは2、3個目である。ただし2個目は4回裏1死一塁で熊谷敬宥が恐らく自ら行った投手右へセーフティー気味のプッシュバント。結果が犠打だった。

 熊谷は前の打席、2回裏、同じ1死一塁で左飛だった。快打で距離も出たが、走者・木浪聖也がスタートしていた。もしヒットエンドランだったとすれば、飛球では進塁できない。

 今は指名打者(DH)制採用で、この日熊谷が入っていた9番は、本番では投手の打順だ。送りバントが持つ意味は大きい。得点圏で1番・近本に打席を回せるからだ。

 昨季、阪神のチーム犠打数は82個とセ・リーグ4番目。優勝したヤクルトは90個だった。48個の巨人が突出して少なく他は81~98個。ただ、投手に限れば、阪神の39個は最多広島42個に次いで多かった。以下、中日33個、ヤクルト28個、DeNA24個、巨人22個。阪神の投手はよくバントを決めていたと言える。

 近本は昨季、最多安打のタイトルを獲り、得点もリーグ最多だった。塁に出る役割に加え、走者を還す打者としての期待も高まる。昨季の打点50も1番では上出来だが、得点圏打率は3割1厘。上積みを期待したい。

 3個目の犠打は6回裏無死二塁で梅野隆太郎が初球で決めた。だが、1死三塁で木浪が初球を浅い左飛は残念だった。

 監督・矢野燿大は「もう1点、2点というのはあるが、形はよくなってきた」と一定の手応えを得ていた。 =敬称略=
 (編集委員)

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