敗戦の中で際立ったマルテの執念とたくましさ 春季Cで見たハングリーな姿勢とは

[ 2021年9月1日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5ー8中日 ( 2021年8月31日    甲子園 )

<神・中(15)> 5回1死満塁、マルテは走者一掃の同点適時二塁打を放つ (撮影・平嶋 理子)  
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 【畑野理之 理論】ジェフリー・マルテの真骨頂だった。0―5の5回に2点を返して、なお1死満塁で右中間に走者一掃の二塁打で同点。藤嶋健人の低めスプリットはしっかりと見逃し、カウント2―2からの高めスライダーを仕留めた。浅い左飛でアウトカウントだけを増やした前を打つ中野拓夢も助けられた。持ち前の選球眼の良さ、勝負強さが発揮されて、期待どおりの打線の起爆剤になった。

 3位まで落ちて迎えた一戦。矢野燿大監督はマルテを昇格させて、ジェリー・サンズ、メル・ロハス・ジュニアの3人を同時起用した。球団初めてとなる外国人クリーンアップ。大山悠輔、佐藤輝明をそろってスタメンから外す勝負手だった。

 春季キャンプでマルテが何度か三塁の守備でノックを受けていた。「俺は三塁も守れる。一塁だけとは思っていない」。確かに昨年14試合に出場しているが、申しわけないが正直、“いやいやマルちゃん、そこじゃないでしょ。大山がいるんやから一塁の練習をした方がいいって”と思っていた。昨年28本塁打を放ち、4番、そして主将も務める大山中心のチームでスタートしているからだ。もちろん8分の5の外国人枠を突破しなければならないのは承知の上で、それでもマルテは最も不落と思われた城攻めも開始していたというわけだ。

 開幕から一塁のポジションを勝ち取り、オープン戦もウエスタン・リーグでも今季は三塁は一度も守っていない。28日のプロアマ交流戦の大商大戦で、志願して三塁に就いたのが唯一の準備だった。

 キャンプ中の亀山つとむ(本紙評論家)の言葉も思い出す。

 「ルーキーリーグやマイナーリーグ、メジャーリーグに上がってからもいろんな球団でプレーしているからハングリーさは人一倍だろうし、自分が生き抜くすべもよく知っているんだろうね」

 ドミニカ共和国出身で07年にメッツ入りしてからアスレチックス、そしてタイガースでメジャーデビュー、さらにエンゼルスと渡り歩いてきた。19年からの阪神でも3年間いつもレギュラー争いの中に放り込まれてきた強さがある。

 7回にも遊撃への内野安打で復帰戦をマルチで飾った。サンズとロハスは不発で、代打で登場した大山と佐藤輝もいずれも空振り三振。この試合に限っては、ただただ、マルテの執念とたくましさが際立っていた。=敬称略=
 (専門委員)

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2021年9月1日のニュース