2年ぶり夏の甲子園 くじけなかった球児に「ほほえむ、希望」

[ 2021年8月11日 05:30 ]

第103回全国高校野球選手権大会第1日 ( 2021年8月10日    甲子園 )

マスク姿で行進する出場校の選手たち(撮影・平嶋 理子)
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 「雲はわき 光あふれて」。外野に並んだ49校の球児に向け、歌手で俳優の山崎育三郎の歌声が響く。大会歌「栄冠は君に輝く」の独唱。歌詞に合わせるように、青空と入道雲が球児たちの2年ぶりの夏を歓迎した。台風の影響で1日遅れとなったが、快晴の中で第103回大会が始まった。

 野球少年だった山崎は、昨年のNHK連続テレビ小説「エール」の中で、同ドラマのモデルになった古関裕而氏が作曲した大会歌を歌うシーンがあった。憧れの甲子園球場で歌詞をかみしめるように、じっくりと間を空けながら、3番まで歌い上げた。

 学校関係者、保護者らに入場は制限され、一般客の姿はない。入場行進は球場内を一周せず、外野から数十メートルの前進だけ。選手はマスク着用が義務づけられた。炎天下で、入場行進後には給水時間が設けられ、水分を補給した。

 小松大谷(石川)の木下仁緒(にお)主将(3年)が選手宣誓役を務めた。コロナ禍で甲子園大会が中止となった昨年の3年生の思いを忘れず、「私たちはくじけませんでした」と堂々と言った。始球式は甲子園と同じ兵庫県西宮市内にある甲陽学院で昨年は3年生部員だった吉田裕翔さん、嘉村太志さんが務めた。卒業後は医学の道に進んだ2人。思いを背負った、バッテリー再結成だった。

 アルプス席には、ブラスバンドが奏でる音色が戻った。50人の制限はある。それでも「ウィー・ウィル・ロック・ユー」に合わせて、みんながメガホンを叩けば、迫力はあった。

 開幕試合は9回の攻防に、意地がぶつかった。3点差に迫った米子東はなお無死満塁と攻めた。大声で指示を出す間だけ、監督のマスクは顎に移動する。大ピンチで登板した日大山形の背番号10は冷静だった。滝口琉偉(るい=3年)は3者連続三振を奪い、試合は終わった。ホームベース付近で間隔を空けて、小さな声での校歌だったけれど、2年分の思いが詰まった校歌が、確かに甲子園に響いた。

 甲子園に潜む魔物は、今年はおとなしくしているようだ。日本人の気質なのか、負けている高校の背中を押す大歓声が、魔物の正体か。今年は原則無観客ゆえに、ホームもアウェーもない。

 7月3日。神宮球場で行われた東西東京大会の開会式。大会歌を独唱した国立音大付の2年生、小林未来さんは「拍手をしてもらったときに、生きていて良かったなと思いました」と言った。「ほほえむ、希望」のフレーズに最も思いを込めたと、後に明かした。

 過去最多が繰り返される新型コロナウイルスの感染者数。そんな中、五輪閉幕を待って始まった甲子園大会。複雑な状況でも開催される。「ほほえむ、希望」が詰まった、第103回大会になりますように。(川島 毅洋)

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