阪神・秋山 8年目の開花の真相 転機となった3つのポイント

[ 2017年5月9日 05:45 ]

セ・リーグ   阪神―巨人 ( 2017年5月9日    東京ドーム )

藤川(左)と秋山
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 首位に立つ阪神で、本格開花の兆しを見せているのが、9日の巨人戦(東京ドーム)に先発予定の秋山拓巳投手(26)だ。白星こそ1勝(2敗)に止まっているが、登板全5試合で6イニング以上を投げ、4度、クオリティースタート(6回以上、自責点3以下)をマークするなど、抜群の安定感を見せる。長年、伸び悩んできた男が、なぜ、8年目の今季1軍で躍動できるようになったのか。高卒1年目から取材してきたスポニチ本紙記者が、本人、関係者の取材をもとに迫った。なお、この日の秋山は甲子園での投手指名練習に参加し、最終調整を行った。(取材・遠藤 礼)

 「別人」に見えた。18歳だった1年目から秋山の投球を見てきた僕が目にしたのは、間違いなく「豪球」だった。4月25日のDeNA戦の初回2死一塁で、5番・ロペスを見逃し三振に仕留めた外角低めのボールは、プロ入り最速の148キロをマーク。近年、130キロ台も珍しくなかった直球は、見違えるほどの変貌を遂げていた。

 その試合で自己最多11奪三振を記録し、うち6個を直球で奪った。新人で4勝をマークした10年の活躍は、今でも鮮明に僕の記憶に刻まれている。ただ、投球スタイルが、当時と重なるかと言われれば、そうではない。7年間、ボールを受けてきた片山ブルペン捕手は「1年目の時は、低めの直球でゴロを打たせていた。でも、今は全く違う直球。ズドンと来る感じ」と球威、球速も格段にアップしたことを、ミット越しに実感する。

 単刀直入、「何が良くなったのか?」と本人に聞くと、答えは、やはり、「直球」だった。

 「直球に自信が持てるようになった。きっかけは、昨年、球児さん(藤川)に言われたんです」

 昨年8月17日の広島戦(京セラ)が転機だという。中継ぎ要員として1軍に呼ばれ、5点ビハインドの8回から4番手でマウンドへ向かう前、ブルペンで藤川に呼び止められた。

 「球速を意識して思い切り、腕振って投げてみろ。球速を出して、今後、使ってもらえるようなものを見せないと」

 「先発で、もうチャンスは無いと思っていたので」と目標を見失いかけていたところで、背中を押された。「球速」に、こだわりマウンドでは腕を振った。2回2奪三振無失点。結果以上に、得たものは大きかった。

 「自然と体をひねって投げられるようになったんです。イメージは(巨人)菅野さんですね」

 球界屈指のエースと同様に、左足を上げる際に、体をわずかにひねることで、ボールに力が伝わりやすくなった。さらに、オフに合同自主トレを行ったオリックス・岸田を参考にし、テークバックの際に、弓を引くように胸を張ることを意識。腕の走りが増して、出所も見づらくなった。

 2軍時代から指導する香田投手コーチは別の視点から分析した。

 「角度が生まれて、上から叩けるから球速も上がった。踏み出す左足の歩幅を少し狭めることで、軸足(右足)が立つようになった。ほんの5センチぐらいの違いだけどね」

 角度が付き、フォークにも落差が生まれる副産物も得た。軸となる直球のグレードアップが、他球種にも好影響を及ぼし、投球の幅は広がった。

 伸び悩んだ2年目以降、毎年のようにフォームが変わり、苦悩してきた姿を見てきただけにフォームが固まったことは大きい。実戦で好投を続けた今春キャンプ終盤には「プロに入って、一番良い形で投げれてます。今年が本当に最後のチャンスだから」と手応えを得て、開幕を迎えていた。

 「例えば、内角に直球を投げて、2球目に外角に変化球を投げる時も“あの直球を投げているから大丈夫だろう”と思えるようになりました」

 過去7年間、もがき苦しみ、やっと手にした「自信」を胸に、秋山は腕を振っている。

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