【内田雅也の追球】得点増への阪神・岡田監督の「考え方」 狙い球を絞り四球を増やす

[ 2022年10月29日 08:00 ]

バットを手にする岡田監督(撮影・岸 良祐)
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 岡田彰布は現役を引退した1995年オフ、1通の手紙をもらった。男性ファンの記録マニアだった。「歴代200本塁打以上放った打者で、岡田さんは2ストライク後の本塁打率(何打数に1本、本塁打したか)が最高だった」とあった。

 ちなみに、王貞治は2ストライク後、15打数に1本の本塁打率、長嶋茂雄は24打数に1本だったと宇佐美徹也『プロ野球 記録・奇録・きろく』(文春文庫)にある。

 岡田はなるほどと合点がいった。自身は相手投手の配球を読んで打つタイプだった。「初球は何がくるかわからない。ほとんど見逃していた。2ストライク後なら真っすぐか決め球が来る。狙い球を絞りやすい」

 追い込まれても悪球には手を出さずに辛抱し、読みと集中力で打つすごみがあった。だから三振は少なく四球は多かった。たとえば、優勝した1985(昭和60)年(130試合制)は127試合に出場し64四球、41三振だった。「打席自制心」の指標の一つ「BB/K」(四球÷三振)は1・56と高い数値になる。

 そんな岡田だからだろう。近年の阪神打線の姿勢には首をかしげる。

 秋季練習が第2クールに入った28日、打撃練習の合間に球場内通路で顔を合わせた。「全然悪くないよ。みんな、いいバッティングしているよ。ホンマに」。フリー打撃で見た各打者のフォームやスイングをほめた。

 「なのに何で打てんのや? 点が取れんのや?」と自問自答していた。今季も得点力不足に泣いた。チーム打率も得点もリーグ5位だった。

 「ちょっとした考え方なんやろうな」というのが自分で出した答えだった。「初球から何でもかんでも打ちにいく姿勢を考えなおせば、まだまだ打てるし点も取れるよ」

 積極性をはき違えているというわけか。狙い球を絞れば「四球ももっと増える」と言った。今季(143試合制)、リーグ3位の157安打も放った中野拓夢の四球は18個に過ぎず、近本光司は41個。「近本も60個なら3割よ」と言った。確かに、あと19個四球あれば打率3割4厘だった。チームで358個はヤクルト442個、巨人429個に次ぐ3番目だが、大差がついている。

 前監督・矢野燿大が唱えていた「超積極的」に、岡田の言う「読み」が加われば…と想像が膨らんだ。=敬称略=(編集委員)

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2022年10月29日のニュース