あるぞ日本S第8戦!史上唯一の86年知る西武OB・辻発彦氏「ここまで来たら見たい」

[ 2022年10月29日 05:20 ]

1986年の日本シリーズ第8戦で日本一を決め、マウンドの工藤(左から2人目)のもとに駆け寄る(右から)清原、辻、石毛
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 2勝2敗1分けのタイで盛り上がりを見せている日本シリーズ。29日からはヤクルトの本拠・神宮に舞台を移す。同じ顔合わせだった昨年から、11試合で10試合が2点差以内と実力が拮抗(きっこう)。西武―広島が戦った86年以来36年ぶり、史上2度目の第8戦突入の可能性も出てきた。当時、西武の主力として戦い今季まで監督を務めた辻発彦氏(64)が「第8戦シリーズ」を振り返り、今後のシリーズの行方を語った。

 広島と8試合戦った日本シリーズから、もう36年もたつ。86年はプロ3年目で、初めてフル出場した年だった。

 初戦で2点リードの9回に東尾さんがソロを2本打たれて、延長引き分け。そして、第2戦から3連敗。冗談交じりに「もう(第6戦以降の)広島に行かなくていいやろ」という感じだった。第5戦で(工藤)公康がサヨナラ打。それでも、まだ雰囲気は「広島行くことになっちゃったな」。6戦目は「あれ、勝っちゃった」。7戦目も勝ち「おいおいここまで来たら負けられないよな」と次第に盛り上がった。一度は死んだ身。勢いでは完全にウチが有利になった。今回もオリックスにしてみれば「危なかったけど、取り返してここまできたら出し切ろうぜ」と開き直ることができると思う。

 鍵になるのは、やっぱり先制点。あとは細かいミスをしないこと。展開を見る限り接戦には見えるが、ミスも目立つ。飛び込まなくてもいい打球に飛び込んでそらしたり、バント失敗もあった。ミスも野球だが、ここというポイントで、きちんと仕事ができるかどうかが勝負を分ける。

 第6戦からは神宮。基本的には地の利があるヤクルトが有利だ。村上は絶好調ではないが、あの存在が大きい。オスナも調子がいいし、山田も状態が上向き。塩見も止めたバットがヒットになるぐらいのラッキーボーイ。投手も基本的に昨年のシリーズを経験しているのは大きいと思う。

 オリックスは山本が使えないのは苦しいと思うが、(29日先発の)山崎福は大学時代から神宮に慣れているし、第2戦も良かったから大丈夫だろう。中継ぎにあれだけの剛腕が出てくるのも、ヤクルトにとっては厳しい。打線では中川圭の存在が大きい。いいところで打つし、思い切りもある。シーズンでもラオウ(杉本)が不調だった分、中川圭の存在は凄く嫌だった。吉田正が2本打ったから、その前後の打者への攻め方も変わってくるだろう。地の利はヤクルトだが、分からない。神宮で白星を分け合う可能性はある。

 監督を離れて、久しぶりに外から見ているが、やっぱり野球は面白い。この時期まで野球をやれているのは凄いこと。なかなか経験できないことだし、ここまできたら第8戦まで見てみたい。(前西武監督)

 ◇辻 発彦(つじ・はつひこ)1958年(昭33)10月24日生まれ、佐賀県出身の64歳。佐賀東から日本通運を経て83年ドラフト2位で西武入団。96年からヤクルトでプレーし99年に現役を引退。93年に首位打者。二塁手として8度のゴールデングラブ賞に輝いた。ヤクルト、横浜(現DeNA)、中日コーチなどを経て17年から今季まで西武監督。06年WBCでは侍ジャパンの内野守備走塁コーチを務めた。右投げ右打ち。

 ▽1986年の日本シリーズ 西武VS広島。10月18日の第1戦は広島が9回に東尾から小早川、山本浩の連続本塁打で4―4とし、史上最長タイの延長14回で引き分け。2戦目からは広島が3連勝して王手をかけた。同23日の第5戦も1―1で延長戦。西武は延長12回1死二塁から2番手で登板していた工藤が、津田から右翼線にサヨナラ安打を放った。これで勢いに乗って一気の4連勝。同27日の史上初の第8戦は3―2で勝利し、3年ぶりの日本一に輝いた。

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