回を重ねるごとに進化する松井秀喜氏の指導者ぶり 別のステージでも見たい

[ 2022年10月6日 08:00 ]

9月24日、ニューヨーク州ハドソン・バレーで野球教室を行った松井秀喜氏(右)(撮影・杉浦大介通信員)
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 巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(48)の野球教室が9月24日、ニューヨーク州ハドソン・バレーにあるマイナーの球場で行われた。NPO法人「松井55ベースボールファウンデーション」が主催するこのイベントも、もう21回目。これまで何度となくこの野球教室の取材に足を運んできたが、数を重ね、松井氏の指導もよりスムーズになり、参加者を上手に惹(ひ)きつけている印象があった。

 守備、打撃の練習を始める前に、松井氏がまず少年たちに言葉でレクチャーするのが指導の流れ。その際にはデレク・ジーター、マリアノ・リベラ、アンディ・ペティットといった元チームメートたちがどんな選手だったか、どんな部分を大事にしているかを話すのが恒例だ。今回はそれに加え、今季本塁打記録で全米的な話題になっているアーロン・ジャッジ外野手の名前を例に出し、その打撃について子供たちに話していた。

 「スーパースターたちと一緒にプレーしましたけど、彼らは普段からすごく基本的なことをすごく大事にしていました。(少年少女たちは)僕のことを知らないと思いますけど、彼らが知っているような選手で、僕が見てきた選手はこういうふうにしていたよ、と言うと、ちょっと響くみたいなんですよ。そういう形で基本的なことをみんな大事にしていたよ、と伝えたいなと思っています」

 優しげな目でそう話した松井氏は、ヤンキース傘下のマイナーチームでインストラクターを務めていた頃、ジャッジの打撃を間近で見たことがあったという。

 若い頃と比べ、現在のジャッジはスイングの際に体重を後ろにかけ、ボールを手元まで引き付けて打つようになった。今が旬のスラッガーのそんな成功例を松井氏が話すと、少年たちは目を輝かせて耳を傾けていた。10歳前後の少年少女たちは確かに松井氏の現役時代のことは知らないかもしれないが、「今」と結びつけることで言葉には説得力が出る。これは松井氏が経験から得た指導法の一つに違いない。

 松井氏の思慮深さが発揮されたのは、この件だけではない。イベント後のメディア対応の際、野球教室を支えるコーチ陣に温かい言葉で感謝していたのも印象的だった。「コーチたちに頼っている部分がかなりある。彼らがいつも改善してくれているから、私がやりやすくなっているかなと思います」という賞賛を聞いて、多くは草野球チーム「Team Matsui」でプレーし、長きにわたって松井氏の活動を支えて来たスタッフも今後へのモチベーションをさらにかき立てられたはずだ。

 「松井55ベースボールファウンデーション」による野球教室はもちろん継続され、次回は松井氏の故郷である石川県で6年ぶりに開催される。これから先、どのように拡大し、どれだけ充実したプログラムになっていくかの推移は見逃せない。同時に、マイナーリーガーの指導や子供たちを相手にしたクリニックで経験を積み、コーチとしても成長しているように見える松井氏の今後も楽しみだ。また別のステージで、指導者としても活躍する姿が見てみたいと感じているのは、私だけではないだろう。(杉浦大介通信員)

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2022年10月6日のニュース