オリックス・能見兼任コーチが語る強い投手力の秘けつ 絶対的エース由伸の存在と長所伸ばす中嶋流の指導

[ 2022年10月3日 07:00 ]

パ・リーグ   オリックス5‐2楽天 ( 2022年10月2日    楽天生命 )

春季キャンプ中、宮城(右)にフォークの握りを教える能見(撮影・後藤大輝)

 リーグ屈指の投手力が連覇への原動力となった。今季限りで現役を引退する能見は昨季から投手コーチ兼任としてチームを支えてきた。若手中心の投手陣の中で“兄貴分”としてサポート。首脳陣と選手をつなぐ重要ポストを託されたベテランが歓喜までの舞台裏を明かした。

 「(投手の能力は)一言で言えばすごい。それでも、まだまだ伸びる要素、伸びしろもたくさんある」

 連覇を果たしてもなお、さらなる飛躍の可能性について言及した。セ・パの両チームで18年間もプレー。数々の投手と接し見る目が肥えた能見でさえ能力の高さを評価。その事実を象徴する選手がエースの山本。プロ6年目の今季はシーズン15勝5敗で防御率1・68の活躍だった。昨季は18勝5敗で防御率1・39。193回2/3を投げるなど大車輪の働きで25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。蓄積疲労の影響も懸念される中でも2年連続でフル回転。しかし体の状態は決して本調子ではなかった。

 「(しかも)本人は“昨年と比べると状態は良くない”と言っていた。それでも結果を出してくれている。これだけやってくれているから十分だよとは常に伝えていた。山本は絶対的だけど、一人がしっかりしていることで周りがうまく回れているというのはある」

 絶対的な存在は精神的支柱の役割も担っていた。ただ、シーズンは長丁場。強い大黒柱あっても戦国パ・リーグでの連覇は容易ではない。やはりエースの脇を固める存在がいたことも強調した。

 「(山本)一人だけではどうしようもない。でも、幸いチームには若い選手がいる。各個人でというよりは、みんな、全員でという意識を持っている」

 先発投手陣では山本に次ぐ勝利数が宮城、田嶋、山岡、山崎福と続く。練習では43歳左腕が山岡のキャッチボール相手だ。宮城、山崎福らは能見直伝のフォークを習得。それぞれが球界投手最年長の影響を受けていた。

 「(宮城は)まだ21歳なので、いろんな壁は来ている。そういう時に弱さというのが出る。しかし監督、コーチをはじめいろいろな方が変化に気づいてくれる。(成績や調子が)一気には落ちないように周りがサポートしている。そういう環境をつくれているのがオリックスの特徴かな」

 コーチ会議では中嶋監督が意見交換しやすい環境をつくっていた。その場では各コーチが時間をかけて議論。各選手の課題などの情報を交換し、常に共有する体制が構築されていた。“チーム宮城”だけでなく各選手に応じた首脳陣によるチームを編成。あえて「答え」を与える場合もあれば、「ヒント」だけを与える場合など各選手のタイプに応じてアプローチ方法を変えていた。強靱(きょうじん)なチーム力が強さの秘訣(ひけつ)かもしれない。

 「なぜ?(実績や経験のない選手が重要な場面で)結果を出せるのか。それが分からないんですよ。(答えを)探しています」

 コーチ経験はわずか2年。強い投手力の原点は何か…。自問自答の日々が続く中、唯一の可能性として挙げたのが中嶋監督のブレない方針だった。

 「監督は攻める投球というものが見えれば、打たれてもいいという方。それがいい方向に行っているのかなと。(攻める投球とは)気持ちと、自分の特徴、自信あるボールを投げること。それを実践して打たれても責めることはしない。その逆をすれば厳しいです」

 “中嶋マジック”と評されるゆえんが、そこにはあった。長所を伸ばす指導法が結果に結びついている可能性が高い。「まだまだこれからで、やってもらわないといけないことはまだまだあります。でも、できたときには、とんでもなくなるんじゃないかと思う部分がある。その能力は本当に未知数です」。今季は8人がセーブを記録。優勝チームからセーブ記録者が8人存在したのは78年のヤクルト以来だ。連覇を果たしたオリックス。その先には「投手王国」の未来も待っている。

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2022年10月3日のニュース