甲子園のスター 近江・山田陽翔のプロ生活に幸あれ

[ 2022年10月3日 08:00 ]

<近江・国学院栃木>9回、適時二塁打を放つ近江・山田(撮影・藤山 由理)
Photo By スポニチ

 こんなに柔らかい彼の表情を見たのは、本当に久しぶりだった。

 2日の国体・国学院栃木戦に5―6で惜敗し、最速149キロ右腕の近江・山田陽翔は高校での公式戦を全て終えた。9回2死一塁、カウント0―2の“あと1球”というシチュエーションから、あと少しでホームランという左翼フェンス直撃の適時二塁打を放って球場をどよめかせたのも、スター性の高い山田らしい。

 マウンドに上がることはなく敗れたが、試合後、もはや坊主頭とは呼べなくなった爽やかな短髪で受け答えする様子に、3年間やり切ったという達成感がにじんだ。いつも気遣いと笑顔を忘れない男がチームを背負い、地方大会、甲子園、U18と、強豪に立ち向かっていけばいくほど、どんどん表情がつらそうになっていくのを、誠に恐縮で勝手ながら胸が詰まる思いで見ていたのだが、やはり山田は山田だった。

 「負けてはしまったんですけど、この仲間たちと野球をすることができて良かった。みんなに“ありがとう”と伝えたい」

 すでにプロ志望届を提出済みで、20日のドラフト会議での指名を待つ。憧れの投手に挙げるのはソフトバンク・千賀。投球シーンを集めた映像をYouTubeで何度も見てきた。自身もフォークやツーシームが持ち球。ただ、千賀と肩を並べることが並大抵のことではないことも、18歳は理解している。「プロはレベルが何段もはね上がる世界。今まで通用していたことが通用しなくなる。まずはストレートを150キロ台に持っていくことが一番」と課題をしっかり認識している。

 もちろん、厳しいプロの舞台では笑ってばかりもいられないだろうが、3年間、取材してきて感じる彼の魅力は突出した実力だけではない、スター性と何かやってくれるのではないかという期待感だ。今でも山田が投げていたり、打席に立ったりすると、大勢のファンがカメラを構える。その人数は男女を問わず、今年の高校生では群を抜いている。高い壁もたくさん、目の前にそびえ立つのだろうが、持ち前の明るさで乗り越えてほしい。プロ野球選手・山田陽翔に幸あれ――。(記者コラム・北野 将市)

続きを表示

この記事のフォト

2022年10月3日のニュース