奥原希望、コロナ下で無敗継続の裏に食事、データ改革…味の素担当者が明かす黄金プロジェクト

[ 2021年4月15日 10:40 ]

オリジナル「勝ち飯」開発の打ち合わせを行う奥原(左)(味の素提供)
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 バドミントン女子シングルスで東京五輪出場を確実にしている奥原希望(26=太陽ホールディングス)は、コロナ禍でのワールドツアー中断明け後、公式戦無敗を継続している。今夏の大舞台へ好調を維持できる理由の1つが、心強いサポート態勢。トップアスリートを支援する「味の素ビクトリープロジェクト」で奥原を担当するディレクター・上野祐輝氏(35)が、そのプロジェクトの一端を語った。

 夢舞台へ向け、視界は良好だ。奥原はツアー再開初戦の昨年10月のデンマーク・オープンで優勝し、今年3月に行われた伝統の全英オープンも制覇した。昨年12月の全日本総合選手権を合わせれば出場した公式戦15戦無敗。奥原は「五輪が開催されるのを信じながら毎日変わらず練習に取り組みたい」と語る。

 16年リオデジャネイロ五輪でシングルス日本勢初の銅メダルを獲得。さらなる飛躍を目指す奥原に、リオ五輪後から味の素の本格サポートが入った。毎日の体組成(体重、除脂肪体重)データを基に、上野氏はじめ管理栄養士やアミノ酸のスペシャリストが食事のアドバイスを送る。奥原との直接の窓口になっている上野氏は「ご飯にサバ缶を乗っけて、だし茶漬けにしてみたら?など。どうしたら栄養素を簡単に取れるか情報提供していた」と語る。

 奥原の最大の武器はスピードを生かしたフットワーク。だが、裏を返せば、エネルギー消費が激しいため疲労が蓄積しやすい。準優勝に終わった19年8月の世界選手権決勝では持ち味が消えて完敗。原因は大会前の追い込みか大会中か明確な理由が分からず、同大会後に心拍へのアプローチも始めた。

 練習、試合中には必ず心拍測定器の黒バンドを左腕に巻く。心拍数から運動強度を5段階に分けて記録し、疲労度も割り出す。「ハードワークがオーバーワークにならないように」と上野氏。コート外でも四六時中、心拍センサーつきの「オーラ・リング」を指にはめて心拍データを蓄積。コンディションを客観的に分析することで、試合に状態を合わせるピーキングの精度も高まっている。

 世界を見渡しても、バドミントン界でここまで細部にこだわる選手はまれ。「奥原選手は情報感度が高く、ストイック。目的意識を常に持っている」と上野氏。全てはTOKYOでの歓喜のため。黄金へのプロジェクトは、今日も続いている。


 昨年12月の全日本総合選手権前に、奥原だけのオリジナル「勝ち飯」も開発された。心拍データや普段の過去に提供した食事の解析から、エネルギー源の糖質を多く摂取した方がいいと判断。試合前の緊張状態などで大盛りの白米ではストレスになるため、豚キムチの中にしゃぶしゃぶ餅をトッピングする“餅入り豚キム”でエネルギー補給していた。また、低脂質の赤身肉と、エネルギーとなる炭水化物がしっかり摂れる厚めの皮を活用した「エナジーギョーザ」や、コンディショニングに必要なビタミンA、C、Eが豊富な野菜を詰めた「コンディショニングギョーザ」も活用。上野氏は「無理なくおいしく必要な栄養素を取ることができた」と話した。

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