政治家やリーダーに求められてるんは「緒方洪庵的」生き方やで

[ 2021年3月24日 08:00 ]

鳥内秀晃氏
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 【名将鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】卒業シーズンやから、こんな話しよか。スポーツ選手の経歴で「○○大」とかあるやん。中には、ちゃんと卒業できてへんケースがいっぱいあることを子供にスポーツさしてる親御さんは知ってんのかな。けど、おかしな話やろ。大学へ行っとったんなら、単位を取るんは当たり前のことやん。大部分の人間はいつか競技を辞めて、普通に仕事するわけやろ。その時、勉強してへんかったら、どこも雇ってくれへんで。

 大学といえば、アメリカにアイビー・リーグ(東海岸にある8私大の総称で政財界などに優秀な人材を輩出)ってあるわな。スポーツ奨学金の制度がないのに、約3割の学生が何らかのスポーツをやってんねん。机上の勉強だけでは、リーダーシップとか身につかへんやん。競技を通して話し方、行動も含めて、必要なスキルを手に入れて、将来、政財界のリーダーとして、それを発揮するらしいわ。

 危機管理もスポーツから学ぶ大事な要素やねんけど、日本の場合は全然でけてへんわ。例えば10年前に「3・11」みたいな大災害があったのに、そこから何か勉強したんかな。原子力発電所でいうと、過去にスリーマイル島(米国)、チェルノブイリ(当時ソ連)とか世界中で事故があって、それを教訓にして基準値を上げたり、テロ対策を厳重にしたり、原発自体をやめる国があったわけやん。日本は何の対策も、準備もしてへんやろ。だから、先日の柏崎原発みたいなこと※が起きんねん。

 コロナでも一緒やで。1年前に識者がPCR検査をどんどんやるべきとか、保健所の数を増やすべきとか言うてたのに、いまだに何もやってへんやん。日本みたいな災害の多い国はいつ何が起きるか分からへんし、今回みたいな感染症が流行る可能性もあるわけやん。何でも早く早く手を打って、危機管理しとかな有事に対応できんことを、日本のリーダーはちゃんと理解してんのかな。何でもかんでも想定外で済まさんといてほしいわ。

 そういう政治家には、「21世紀に生きる君たちへ」(司馬遼太郎、朝日出版社)を読んでほしいな。人間が自然に対して思い上がって、メチャクチャなことが起きとった20世紀と違い、21世紀は昔のことを振り返って、ちゃんとやっていかなあきませんよ、と。あと、名や利を求めず、他人のために尽くした緒方洪庵(江戸末期に活躍した医者)のような生き方こそ、自分や仲間のことしか考えへんトップに求められるんちゃうかな。頼むで、ホンマ。(関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

 ※昨年9月、東京電力の社員が他の社員のIDカードを持ち出し、柏崎原発の中央制御室に不正に入室し、管理態勢の不備が発覚。

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2021年3月24日のニュース