2時間超の宝塚会見 改革案に再生の予感も、徹底した個人情報秘とくで劇団員の心情見えず

[ 2024年3月28日 19:34 ]

<宝塚歌劇団会見>謝罪する阪急阪神HD・嶋田泰夫代表取締役社長、同・大塚順一執行役員(右)、宝塚歌劇団・村上浩爾理事長(左) (撮影・奥 調)
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 22社80名の報道陣が集まる中、2時間を超えた阪急阪神ホールディングス(HD)と宝塚歌劇団による宙組劇団員の急死に関する遺族との合意書締結の報告会見は、謝罪会見といっていい内容だった。

 広範囲にわたるパワーハラスメントの存在を認め、阪急阪神HDの嶋田泰夫代表取締役社長は「全責任は劇団にある」と語り、出席者は最初と最後に「このたびは申し訳ございませんでした」と、深々と頭を下げた。昨年行われた1回目の会見とはうって変わった態度で、世間から浴びた猛批判が相当こたえたのだろう。

 遺族側と合意に至った内容は14項目に及び、遺族側の代理人が主張したパワハラの内容についても、ほぼすべて認めて責任を負うことになった。また、今後の劇団運営の見直し計画にも言及。公演数の削減、稽古時間の見直し、劇団員へのメンタルケアの実施などの概要を説明した。パワハラの温床になったともいえる劇団内のルールや慣習についてもメスを入れることを示し、新しい宝塚歌劇団に生まれ変わることを約束した。

 「全責任はこちら」という劇団の態度もあって、報道陣からの鋭い質問も少ない印象だったが、劇団員個人個人に関する質問についてはかたくなに口をつぐんだ。宙組の上級生はほぼ全員が遺族側に何らかの手紙を書いたということだが、その内容はもちろん、どういう気持ちで書いたのか、また直接謝罪したいと希望した生徒はいなかったのかなど、一切の情報を提示することはなかった。パワハラの当該上級生についての発言や処遇などについても、すべて「申し上げられない」だった。

 最も奇妙に感じたのは、現在も劇団に所属している急死した劇団員の妹に関する質問だ。その心のケアに関しての質問にも「申し上げられない」という発言は少し度が過ぎているようにも聞こえた。

 センシティブな問題で、関西屈指の大企業とすれば個人情報の取り扱いについて慎重になるのは当然なのかもしれない。しかし、宝塚歌劇団はファンの前で芸を披露する団体だ。個人情報を守りつつも、もう少し彼女たちが起こってしまった事実にもがき苦しみながらも再生していこうとしている様子を伝え、それをどうケアしていくのか具体的な言及をしてもよかったのではないだろうか?ファンはそういう血の通った劇団になってくれることを望んでいるはずだ。

 ただ、110年の歴史でも激変ともいえる、大きな組織改革をしようとしている宝塚歌劇団。今の時代に合った、本物の「清く、正しく、美しい」劇団に生まれ変わることを期待したい。

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