高橋努 こわもての“裏切り”人情派 年齢と顔が合って芝居に幅…夢は「令和の寅さん」

[ 2023年2月19日 10:00 ]

さまざまな作品で魅力的な演技を見せる高橋努(撮影・西尾 大助)
Photo By スポニチ

 【俺の顔】こわもて、武骨、不器用…あるいは冷酷。俳優の高橋努(44)が演じた役の説明に使われてきた言葉だ。悪そうで、強そうで、怖そうな役のイメージが強いバイプレーヤーだが、人情芝居でほろりとさせることもある気になる存在。話題作への出演が多い一方で主演は未経験だが、ひそかに「令和の寅さん」となる夢を描いている。  (岩田 浩史)

 「黙っていると怖いと、よく言われます。若い頃から女性に全然話しかけられない。こんな優しい男はいないと思うんですけどね。はははっ」

 役の印象と裏腹によく笑う人だ。

 一重まぶたの鋭い目と、額に左右に走る一本じわ。「目はこれでも大きくなったのかも。“昔は今ほど開いてなかった”と小栗に言われました」。同じ事務所で親友の小栗旬(40)の名を口にすると口元が緩む。「整形してるように思われるから、そういうこと言うなって言ってるんですけどね」。実際に目が大きくなったのかは分からない。「以前は、もっとキツイ目をしていたようです」と、20代半ばの自身を語ってくれた。

 役者の道に入ったのは大学卒業後。高校時代からの親友で俳優きたろう(74)の長男・古関昇悟(44)の劇団創設に携わり、興味を持った。26歳の頃、演出家の故蜷川幸雄氏の劇団のオーディションに合格。その際、蜷川氏に「フリーターの目をしている」と言われたという。生活費を稼ぐため居酒屋でバイトしていたが、役者になる覚悟を問われているようでショックを受けた。「あの言葉がなければ今の自分はいない」。バイトを辞め、生活は苦しくなったが、退路を断ったからこそ道が開けたと感謝する。

 小栗との出会いは、この頃。役を求め、劇団を立ち上げて自ら役を作るなど、もがく目は「ギラギラしていたのかも」と笑う。小栗もまた、高橋に道を示してくれた“恩人”の一人。「芸能界はイケメンだらけ。僕みたいな顔はそうはいない。逆をやればいいと思った」と振り返る。

 転機は不良漫画の名作を実写映画化した「クローズZERO」(2007年)の牧瀬隆史役。一目で強いと分かるルックス、男気あふれる演技で注目を集めた。特徴的な乱ぐい歯は特殊メークで再現されたが「自分は歯を抜くなり削るなりするつもりでした。当時、ド新人のド素人の自分が4~5番手で起用してもらえた。死んでもいい気持ちでした」。

 以来、幅広い役柄で存在感を発揮してきたが「人情ものは、よりテンションが上がる」という。中でも好きなのは、こわもてだからこそできる、見る人への良い意味での“裏切り”。「例えば僕、犯人と間違われる役が多いんです。悪そうに見えて、後になって良い人や芯のある人だと分かったりする。見てる人が驚くと“やった!”って思います」と拳を握った。

 目指すのは「イケメンがやらない芝居」。格好いい話し方、格好いいしぐさ、格好いい見え方はいらない。「実は僕、物凄く運動神経いいんですが、そう見えないよう気をつけています」。そうすることで顔と体からにじみ出る説得力があるのだろう。

 最近は「顔と年齢が合ってきて芝居がやりやすくなった」とも感じている。「20代の頃から40代の父親役をしたり、分からない感覚もありましたから」と苦笑い。

 主演作がないことを「30代までは気にしていた」と言うが、そこに今こだわりはない。大切なのは「自分だからこそできる役」。それが主演ならやってみたいという姿勢だ。「大好きな義理人情もので主演し、それが『男はつらいよ』のようなシリーズとなれば…」と“令和の寅さん”となる自身を夢想する。

 一重まぶたは、加齢で脂肪が落ちて二重になり、目が大きくなることもあるという。「そうなれば仕事がなくなると思います。この顔に生んでくれた親に感謝してるし、困ります」とキッパリ。若い頃より今の顔の方が良いという自信がある。「義理人情を大切に生きてきたつもり。そういうの出てると思います」と語る表情に“俺だけの顔”を手に入れた役者のプライドがにじみ出た。

 ≪「わたしの幸せ…」ヒロイン父親役ビジュア寄せ断念≫3月17日公開の「わたしの幸せな結婚」(監督塚原あゆ子)では、今田美桜(25)演じるヒロインの父親役。主演のSnow Man目黒蓮(26)らイケメンぞろいで、高橋は「原作がイケメンばかりなんで、僕が出ていいのかなあ」と苦笑い。顎木(あぎとぎ)あくみ氏原作の同名小説と漫画を映画化。「原作付きの作品は、なるべくビジュアルを寄せようと努力するが、今回は寄せようがなかった」と断念したという。ヤクザ役で出演の「有り、触れた、未来」(監督山本透)も3月10日に公開予定。

 ◇高橋 努(たかはし・つとむ)1978年(昭53)8月23日生まれ、東京都出身の44歳。蜷川氏演出の舞台「メディア」(05年)などを経て、映画「クローズZERO」で注目を集める。TBSドラマ「S―最後の警官―」(14年)、NHK大河ドラマ「西郷どん」(18年)、映画「新解釈・三國志」(20年)などに出演。国士舘大卒で体育教員免許を取得。特技はサッカー。劇団「渋谷ハチ公前」を主宰。作・演出を手掛ける。1メートル82。血液型A。

続きを表示

この記事のフォト

2023年2月19日のニュース