スポーツソングに一石 Ado敗者の応援歌「マザーソング」

[ 2022年2月20日 12:00 ]

Adoのアニメイラスト
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 カーリング女子の快進撃で最終日の20日まで日本中が盛り上がった北京五輪。テレビ各局は中継や関連番組のほか、情報番組でも“長尺”を割いて伝え、熱気をあおってきた。その放送を彩ったのが各局のスポーツテーマソングだ。

 耳にする機会が最も多かったのは、BSを含め五輪番組を計約650時間放送したNHKの「Fly High」(歌・milet)だろう。ウインタースポーツならではの「高く飛ぶ」というパフォーマンスをサビで描いた壮大な応援歌に勇気をもらった視聴者は多いはずだ。

 民放各局もテーマソングを起用した。フジテレビの「凜」(関ジャニ∞)のようなアップテンポで前向きな歌が目立ったが、異色だったのはTBSの「マザーランド」(Ado)だった。

 歌詞に「地獄」「怒り」「苦痛」などのフレーズが散見され、これまでのスポーツテーマソングのイメージとはかけ離れている。♪楽園じゃない ここは楽園じゃない…と、敗者や劣勢な人に救いの手を差し伸べるような歌だ。

 その歌詞が改めて注目されたのは、17日のフィギュアスケート女子のフリー終了後。昨年12月のドーピング違反が判明しながら個人種目出場を認められたショートプログラム1位のカミラ・ワリエワ(15、ROC)がミスを連発しメダルを逃すと、SNS上には「なんだか彼女のことを歌ってるかのようにも見える」「女子フィギュア見てて妙にイメージが合ってる気がしてきた」などの指摘が相次いだ。♪はなから愛されないと知れるならば楽だったんだ…などと、世界中から批判され、傷だらけでメダルを逃した15歳の心境を代弁しているかのようなフレーズが妙に生々しいからだ。

 ボカロPと呼ばれる音楽プロデューサーの煮ル果実(ニルカジツ)が作詞作曲した。この歌がTBSのテーマソングに決まった時、Adoは「新しい応援歌だと思っています。聴いてくれた誰かを包み込んで、その人間の中のネガティブな言葉や心を受け止めて、きっと皆さんを支えてくれると思います」とコメントしていた。

 五輪でメダルを獲るのはごく一部。出場者のほとんどは敗者だ。その敗者に向けた応援歌が、今最も勢いのあるAdoの歌声に乗せられて、多くの視聴者に心に響いた。母国を意味する「マザーランド」。今後のスポーツソングに大きな影響を与える1曲となりそうだ。

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2022年2月20日のニュース