また起こった不可解で不幸な事故に言葉なし

[ 2021年10月26日 16:18 ]

米俳優のアレック・ボールドウィン(UPI=共同)
Photo By 共同

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】なぜ実弾が?と首を傾げた。米ニューメキシコ州サンタフェ郊外で行われていた西部劇の撮影中に俳優のアレック・ボールドウィン(63)が放った小道具の銃弾でスタッフ2人が死傷したケースだ。

 撮影監督の女性(42)が死亡し、48歳の監督も負傷。CNN電子版などによると、プロデューサーも兼ねるボールドウィンは22日、「今回の悲惨な事故に関し、私のショックと悲しみを伝える言葉は存在しない」「この悲劇がどのように起きたのかを調べる警察の捜査に全面協力している」と声明を発表。亡くなった撮影監督の夫や子どものことを思うと「胸が張り裂ける思い」と述べた。

 サンタフェ保安官事務所が捜査に当たっているが、小道具の銃になぜ空砲ではなく実弾が装填(てん)されていたのかがやはり最大の疑問点。小道具を扱うスタッフは労働組合に所属していなかったとの情報もある。「レッド・オクトーバーを追え!」や「ミッション:インポッシブル」シリーズなどで日本でも人気のスター俳優。今作はインディペンデントの映画らしいが、ずさんな管理も含め、捜査の行方から目が離せない。

 このニュースを耳にして思い出したのが、1993年3月31日に起こったブランドン・リーの死亡事故。ブルース・リーの長男だ。映画「クロウ/飛翔伝説」の撮影中に共演者が発射した弾を腹部に受けて亡くなった。まだ28歳の若さ。父ブルー・リーのファンだっただけに衝撃を受けたものだ。

 日本にもあった。勝新太郎の監督&主演映画「座頭市」の撮影中に発生した事故だ。1988年12月26日のことだった。立ち回りシーンで俳優兼殺陣師の加藤幸雄さん(当時=34)の首に刀が刺さり、翌89年1月11日に帰らぬ人となった。刀を手にしていたのが勝の長男で、使用したのが模造刀ではなく真剣だったことが判明して大きな問題となった。

 これも時代劇未経験のスタッフが長男に真剣を持たせたとの説明があったが、にわかに納得できない人間も少なくなかった。勝が弔問するかもしれないと亡くなった加藤さんの自宅前で先輩記者と張り込んだ記憶がある。東京・世田谷の東宝スタジオの近くだった。

 真相があやふやになることが多く、こうしたケースは後味の悪さだけが残る。(一部敬称略)

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2021年10月26日のニュース