備忘録6

[ 2020年8月16日 08:00 ]

順位戦B級2組、橋本崇載八段(右)の気遣いで感想戦は省略。藤井聡太七段も早々に帰り支度
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 【我満晴朗 こう見えても新人類】

 ☆6月28日 対渡辺明棋聖(第91期棋聖戦5番勝負第2局=東京・将棋会館)

 90手で後手の藤井が開幕2連勝。「歩越しの金」「AI超えの受け」が話題となった対局だ。

 この日も筆者は早めに千駄ケ谷駅に降り立った。目的はただ一つ。藤井のタイトル戦初となる和服姿をいち早く目撃したくて。

 そんな邪念に満ちあふれながら駅前の横断歩道を渡り、鳩森神社方向に歩を進める。20メートルほど前方に目をやると、短髪(というか丸刈りに近い)で小柄な男性がソフトクーラーボックスを肩に掛け、同方向に歩いていた。

 「釣り…?」

 と思った割にはその男性、ビジネス系シャツ&スラックス姿。レジャー目的だとしたら少々違和感がある。しばし間合いをとりながら1、2分観察。な~んだ、渡辺棋聖ではないか。途中でコンビニに入っていったのは、対局中の飲料を大量に購入するためだろう。

 将棋会館には対局開始の1時間以上前に到着。先述のとおり、この日が「和装デビュー」の可能性が高い藤井をナマで確認すべく、特別対局室に通じる踊り場で「入り待ち」を決め込んだ。もちろん「3密」に注意しながら。

 午前8時40分過ぎ、記念すべき瞬間がやってきた。挑戦者控室で着付けを済ませた史上最年少棋士が目の前を悠然と通過する。その容姿をしかと網膜に焼き付けてから記者控室に駆け戻って速報記事を送稿した。AbemaTVでの動画中継より2分ほど先行してネット向けに情報を流すことができたから、ちょっとだけ自己満足。それがどうしたと言われたらそれまでだが。

 ☆7月6日 対橋本崇載八段(順位戦B級2組第2局=東京・将棋会館)

 85手で藤井が開幕2連勝。終局は午後7時50分で、各6時間持ちの順位戦では異例の短時間決着だった。

 この日は取材陣の数が極端に少なく、新型コロナ感染者数も一息ついていた時期でもあり、代表取材後の感想戦では写真撮影が特別に許可された。喜び勇んで一眼レフを手に対局室入りしたら、なんと両者とも荷物をまとめている真っ最中。これは藤井の対局過多を気遣った橋本が感想戦の省略を提案したためだ。通常なら勝利棋士(この場合は藤井)をアップで撮るべくカメラを構えるところなのだが、この日はズームレンズを広角側に設定し「引き」の構図でバシャバシャ。「早々に帰り支度をする橋本八段と藤井七段」というレアな写真が紙面を地味に飾った。

 それがどうしたと言われればそれまでだが。(専門委員)

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2020年8月16日のニュース