【内田雅也の追球】投打ともに「粘り負け」

[ 2024年3月30日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0-4巨人 ( 2024年3月29日    東京D )

<巨・神>5回、ボークでピンチを広げ、安藤コーチ(右)とマウンドで話す青柳(中央)(撮影・大森 寛明)
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 阪神監督・岡田彰布が東京ドームを出たころ、お立ち台で巨人・戸郷翔征が「いっぱい、いっぱいでした」と話していた。本音だろう。6回無失点の勝利投手だが100球を投げていた。いや、阪神打線がよく粘り、投げさせていた。

 放った安打は単打ばかり4本。昨季、チームでセ・リーグ最多を数えた四球こそ2個。ファウルが目立った。

 被投球数は近本光司が3打席で20球、森下翔太3打席14球、前川右京2打席14球……を数えた。

 独特の雰囲気のなか、特別な重圧がのしかかる開幕戦である。開幕投手は普段以上に心身をすり減らす。ならば、粘って消耗させている間に何とか攻略したかった。

 「野球は消耗戦だ」と位置づけたのは映画にもなった『マネー・ボール』の主人公、アスレチックスGM、ビリー・ビーンだった。2000年代初頭の話だが、今でも通用する話だ。ビーンは「アウトになっても、投手に5球以上投げさせた打席はプラスとみるべきだ」と選手の査定評価に盛り込んだ。「四球を選べ」とも命じた。昨季、四球の査定点をかさ上げした岡田に似ている。

 この夜戸郷に対した阪神打者のべ23人中、のべ10人も5球以上投げさせている。それでも、その10人の結果は8打数1安打2四球だった。

 粘って食らいついて……最後は粘り負け、根負けした格好である。目立ったファウルは仕留められなかったとも言える。

 一方、阪神先発の青柳晃洋も巨人打線に粘られ消耗していた。5回で91球を投げさせられた。

 「5球以上」の打者を数えてみると9人いた。結果は8打数3安打1四球と粘り負けだった。

 5回裏、自身のボークから内野ゴロで失点。2死後、梶谷隆幸に手痛い2ランを浴びた。連続ファウルで粘られ、際どい球を見極められ、7球目を被弾したのだった。

 長いシーズンである。開幕戦も「143分の1」に過ぎない。負ければ余計にそう思いたい。

 ペナントレースを「一寸先は闇」と語ったのは先のビーンの師匠、サンディ・アルダーソンだった。岡田も「去年のように、うまいことはいかんよ」と、ふんどしを締めて臨んでいる。

 ひざだろうか。下半身が万全でない大山悠輔は心配だ。だが、零敗とはいえ、粘り食い下がった点を前向きにとらえ、明日を見たい。 =敬称略= (編集委員)

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