ソフトバンク・オスナ グラブの色を変えた理由「思いを込めて、試合に臨んだ」

[ 2023年3月23日 08:00 ]

グラブの色を変えたソフトバンクのオスナ
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 母国へ送った快投に、納得のご様子だった。3月21日、エスコンフィールド北海道で行われた日本ハム戦後、帰りのバスに向かう地下通路。ドレッドヘアでヒゲをたくわえた右腕は、こちらを見てウインクをかましながらピアスを光らせて帰っていった。今季からソフトバンクに新加入したメキシカンことロベルト・オスナ投手(27)の所作だ。世界一に輝いた侍ジャパンが準決勝でメキシコを撃破した同日の8回に登板。愛用品の彩りこそいつもとは違ったが、完全投球で終えた。

 「思いを込めてメキシコカラーのグラブで試合に臨んだ。いい投球ができて良かった。準決勝にふさわしい、素晴らしい試合だった。その中でエキサイトさせてくれる最高な試合を見せてくれたメキシコを、誇りに思う」

 オープン戦6試合目に不意を突いてグラブの色を変えてきた。これまでのド派手なピンク色から赤、緑、白の国旗カラーだ。昨夏のロッテ加入時から持っていたものだった。登板前にはマウンド後方で指で十字架を描いて天に向かって祈った。その際に周囲は、母国代表に送る投球だと気付き、ざわついた。

 17年の第4回WBCメキシコ代表だが、今大会は新天地での調整に専念する理由もあって出場は見送った。「このWBCは特別な思いがある大会でもあったし、自分は代表でプレーできなかった」と振り返る。2月1日の宮崎春季キャンプ初日から合流。マイペース調整を続けたが、ここまで心配は、ご無用だ。

 21日の登板後、日本の優勝を予言していた。「日本はタレントがそろっているし、優勝すべきチームだと思っているよ」。そして22日午前の決勝で、侍ジャパンは米国を破って世界一。オスナは同日のナイター・日本ハム戦で2連投、19日のDeNA戦からは3連投で登板した。

 8回先頭のアルカンタラに一塁ベースにぶち当たる初安打を許しオープン戦7試合目で初めて走者を背負ったが動じない。無死二、三塁のピンチを背負うも二直併殺と見逃し三振。初失点を許さなかった。日本―メキシコ戦の終了翌日。試合戦前の調整では黒と青色のグラブだったが、再びメキシコ色のグラブで、マウンドにいた。

 ピンク色に戻さずに2度目のメキシコ色に何の思いがあったのか聞きたかったが、寒空のもと地下道を半袖、短パンで早々と帰って行った。今季は9回を任される鷹の新守護神。何か奥が深い、粋な男だ。
(記者コラム・井上 満夫)

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2023年3月23日のニュース