侍・栗山監督 北海道から始まったフィールド・オブ・ドリームス 02年に「栗の樹ファーム」開場

[ 2023年3月23日 05:05 ]

99年、トウモロコシ畑へ消えていく栗山監督
Photo By スポニチ

 北の大地から始まった夢が、マイアミで世界一という正夢になった。歓喜の胴上げ。侍たちの手で、栗山監督は10度宙に舞った。

 「選手たちが本当にうれしそうだった。それが僕にはうれしかった」。野球が生まれた米国で、米国を倒した。ダルビッシュ―大谷というドリームリレーで完結。それは、24年も続く長編ドラマのフィナーレでもあった。「本当に不思議だよね」。指揮官は感慨深げにそう振り返った。

 名前が同じ縁で交流が始まった北海道栗山町に野球場を造ったのは02年。その背中を押したのが、映画「フィールド・オブ・ドリームス」だった。99年、映画の舞台の米アイオワ州のトウモロコシ畑の中の野球場を訪れた時に「違う国の子供たちが、言葉が通じないのに仲良く野球をしてた。野球って凄い」と感激。私財を投じて映画と同じ天然芝の野球場を造り「栗の樹ファーム」を開場した。

 アイオワを訪れてから24年――。栗山監督はマイアミで同じ言葉を口にした。準決勝の劇的な逆転サヨナラ勝ちに「野球ってすげえな」と、この夜も大谷対トラウトでのゲームセットに「野球って凄い」と。映画のような夢を見せてくれる野球に心酔した。

 映画はケビン・コスナー演じる主人公が「それを造れば、彼が来る」という声を聞いて野球場を造ると、往年の名選手がやって来て最後に「彼(仲たがいしたまま他界した父)」が現れる。栗山監督は、栗の樹ファーム開場の10年後に日本ハム監督、その10年後に侍ジャパン監督に就任した。「それを造ったら、ユニホームを着た自分と、“監督と野球ができて良かった”と言ってくれる全ての選手たちが現れた」。大谷と出会い、メジャーへ巣立った愛弟子と米国を倒して世界一になった。それは「フィールド・オブ・ドリームス」そのものだ。

 夢は正夢に。全てのうたげの後、最後に現れたのは「ユニホームを着る前の自分だった」と言った。野球をこよなく愛する一人の男、栗山英樹に戻った瞬間だった。(秋村 誠人)

 ▽フィールド・オブ・ドリームス 89年公開の米国映画。ケビン・コスナー演じるアイオワ州の農民レイ・キンセラは「それを造れば、彼が来る」という不思議な声を聞く。周囲の反対を押し切り野球場を造ると、シューレス・ジョー・ジャクソンら、伝説の選手たちがトウモロコシ畑から現れる。その中に若き日の父親を見つけてキャッチボールをするという、野球を題材に夢や希望、親子の絆を描いた幻想的な作品。アカデミー賞3部門ノミネート。

 ≪栗山町民も涙≫北海道栗山町では、交流施設に町民ら約60人が集まって応援した。勝利が決まると、万歳三唱して感動で涙する人も。監督と20年来の友人という会社社長の塩見望さん(54)は「世界一にしてくれてありがとうと伝えたい」とねぎらった。少年野球チームで活動する中山大夢君(12)は「凄い試合だった。栗山監督とまた一緒に野球がしたい」と喜んだ。

続きを表示

2023年3月23日のニュース