福留孝介氏 侍ジャパンはパワーで対抗、縮まりつつある米との差

[ 2023年3月23日 05:05 ]

WBC決勝   日本3-2米国 ( 2023年3月21日    マイアミ )

<日本・米国>上原浩治氏(右)と話をする福留孝介氏(撮影・光山 貴大)
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 【福留孝介氏WBC決勝観戦記】06、09年のWBC連覇のメンバーで、昨季限りで現役を引退した福留孝介氏(45)は現地で14年ぶりの世界一を見届けた。宮崎合宿から密着し、間近で感じたチームの一体感や選手の苦悩、日本野球の成長など、スポニチ本紙に観戦記を寄せた。

 今回の侍ジャパンを近くで見ていて、一番強く感じたのはチームの一体感。06年はイチローさんという圧倒的な存在がいて、谷繁さんや宮本さんのようなベテランが陰で支えていた。今回は若いメンバーも多かったが、ダルビッシュ、大谷、吉田、そしてヌートバーの中心選手がプレーで引っ張っていた。

 大谷は全てが異次元だった。今回は感情を前面に出し、チームを盛り上げる違った一面も見ることができた。個人的なMVPはダルビッシュ。宮崎合宿の初日から来て、チームのために尽力している姿を見てきたので、本当にうれしく思う。

 村上は試合前に話す機会があった。準決勝のサヨナラ打の興奮で前夜はあまり眠れなかったようだが、吹っ切れたような表情だった。結果が出ない時は甘いコースを見逃し、次のボール球に手を出す悪循環だったが、この日は第1打席の初球を一撃で仕留めた。

 自分も06年は苦しんだ。彼がどれだけの重圧と闘っていたかはよく分かる。その中で諦めることなく、足の上げ方を変えたり、もがいてきた。国際大会では何本打つかよりも、どこで打つか。一番大事な場面で打てばいい。準決勝の逆転サヨナラ打と決勝の同点弾。この2本で彼は重圧に勝ったと言っていい。

 試合後、カブス時代の同僚だった米国のデローサ監督が「おめでとう」と祝福してくれた。悔しそうだったが、日本野球の素晴らしさを称賛していた。以前はスモールベースボールが強みだった。だが、今回は打線の力や投手の球の強さなどパワーでも対抗した。もちろん、日本のトップの投手が2イニングを全力で投げても圧力を感じるほど、米国とはまだ差はある。でも近づいているのは確かで、遠い距離ではない。

 デローサ監督は「The WBC is real」と会見で話した。第1回は手探りで始まったが、17年が経過し、球場の盛り上がり、演出も含めて、根付いてきたと思う。野球の素晴らしさをアピールする最高の大会だった。(野球評論家)

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2023年3月23日のニュース