エンゼルス・大谷 同地区の右腕とのガチンコ勝負と知られざる触れ合い

[ 2022年6月8日 07:45 ]

マリナーズの救援右腕セワルド
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 現在、泥沼の連敗を続けるエンゼルスは、対戦相手がレッドソックス、メッツ、ドジャース、マリナーズと続く今後の戦いの中で、浮上のきっかけを見いだせるかどうかが注目される。また、大谷翔平選手に関しては、昨季は何度も好勝負を演じたマリナーズのリリーフ右腕ポール・セワルド投手とどんな対決を見せてくれるかも楽しみだ。

 セワルドと大谷は昨季、5打数1安打で1本塁打、2四球3三振。終盤のイニングを担ったセワルドと重要な場面でたびたび対戦し、7月には大谷が本塁打を放つと、9月24日は1点差の9回に無走者ながら申告敬遠で歩かされた。セワルドもマリナーズがプレーオフ争いをしていたシーズン最終盤では走者を背負った場面で大谷を三振に取り、派手なガッツポーズをみせて留飲を下げている。

 こうして記していくと、2人の間にちょっとしたライバル関係が存在するかと思うかもしれない。ただ、実際はむしろ逆。セワルドは大谷の大ファンであり、昨季最後の3連戦では何と大谷のボブルヘッド人形にサインをもらったのだという。

 「去年、エンゼルスの本拠地での対戦を僕の家族が見にきていて、翔平のボブルヘッドをもらったんだ。このボブルヘッドに翔平のサインをしてもらえたら最高だな、と思った。アメリカではボブルヘッドはただ単に楽しいものだけど、日本の文化はより厳格なことがあるのは分かっている。だから“ヘイ、このボブルヘッドにサインしてくれないか?”とか軽々しく接するべきではないと考えた。“君は凄いシーズンを過ごしてますね。残念ながらたまに対戦しなければいけないけど、君は本当に凄い選手です”と丁寧に声をかけたんだ(笑い)」

 5月21日、レッドソックスとの対戦でボストンに来ていたセワルドに大谷について聞くと、楽しそうにそんなエピソードを明かしてくれた。

 「対面した時は通訳を通しての会話だったけど、翔平はとても親切だったな。僕の頼みにも“もちろん”とすぐに応じてくれたよ。クラブハウスで働いている人にボブルヘッドとボールを渡したら、すぐにサイン付きで戻ってきた。僕の自宅にはホームベースをかたどったケースが置いてあって、そこに記念の品として収めてあるよ」

 ケースには他にマイク・トラウト、マリナーズでの同僚マルコ・ゴンザレスといった選手からもらったサインも納めてあるのだとか。大谷のボブルヘッドもセワルド自慢の宝箱に仲間入り。こんなエピソードからは、二刀流としてメジャーを席巻する大谷がMLBの同僚たちからもリスペクトされる存在になったことが伝わってくる。

 このように大谷への愛着を目を輝かせながら語る好漢・セワルドだが、2022年もブルペンの一角としてエンゼルスの中軸打者と頻繁に顔を合わせることが予想される。ここまで防御率2・21。5月13日以降は11度の登板で自責点1と好調の右腕は、もちろん勝負師としての気概も忘れてはいない。今季の大谷との対戦への意気込みを語る姿も、また生き生きとしていた。

 「今季はまだ対戦がないけど、翔平を打席に迎えたら自分らしいピッチングができればいいね。スライダーをストライクゾーンに投げ、速球は高めに。彼がスライダーを待っている時には速球を、速球を待っている時にはスライダーをという感じで上手に組み立てられればと思う。対戦経験は豊富だから、翔平は僕の持ち球はもう分かっている。今年も彼との対戦は楽しいものになるはずだ」

 尊敬できる相手だからこそ、その対戦はまた興味深いものになる。6月16日からのエンゼルスの11戦中、何と8度もマリナーズと対戦する中で、セワルドが打席に大谷を迎える場面は必ず出てくるはずである。実際の対決はもちろん、聡明な32歳が試合後、それぞれの勝負をどんな言葉で振り返るのかも楽しみにしておきたい。(杉浦大介通信員)

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