【新井さんが行く!!】阪神・青柳はチームのため腕を振れる真の「エース」

[ 2022年5月3日 05:30 ]

笑顔で練習する阪神・青柳(撮影・平嶋 理子)
Photo By スポニチ

 阪神は、やっと投打がかみ合ってきた。今季最長の6連勝。特に先週末は巨人に3連勝した。巨人に独走を許していたらペナントレースが面白くなくなるところ。そもそも本来のチーム力を考えたらずっと沈んでいるはずはなかった。

 プロ野球は勝率6~4割の間で順位を争うのが普通。一定以上の試合数を消化して、勝率1~2割台が続くことは、まず起こらない。開幕1カ月はマイナス側に振れ過ぎ。悪いものを出し切ったと考えれば、しばらくはプラス側への揺り戻しが続いてもおかしくない。

 好転のきっかけを考えたとき、際立つのは青柳の存在感だ。3戦3勝で1完封を含む2完投。チームを上向かせた立役者と言っていい。数字だけでなく、マウンドで見せる立ち居振る舞い含めて「エース」になったと感じる。

 現役の頃から、自分のためだけでなく、チームのために腕を振れる投手こそエースだと思ってきた。それは後ろで守っている野手にも伝わる。新型コロナ陽性で出遅れた青柳が今季初登板を迎えた時点で、阪神はまだ1勝しかできていなかった。どん底の状況を背負っても、ネガティブで重苦しい雰囲気を出さない。ポジティブに前向きに投げる姿で引っ張った。

 プロ入り当初はどこに来るか分からないほどの制球難。でも、球には絶対的な強さがあった。打者で言えば、当たれば飛ぶけど、いつ当たるか分からない、そんなタイプの選手。人のことは言えないが…。

 弱点を素直に認め、反骨心と向上心を持ち、少しずつ時間をかけ、自分をつくってきた。課題だった制球力が今は武器にもなっている。日の当たる道ではなく、苦しみながら、はい上がってきた選手は強い。精神的にもタフだ。たくさん苦労を知っているから、周りの痛みも分かる。ブルペン陣が連投中だった前回の巨人戦も1点差で129球を完投。一緒に戦っているチームメートが青柳のことを「エース」と認めていると思う。

 これほどの投手がドラフト5位から大成。だから、野球界は奥深い。指名した当時の監督は誰だったか…。名前は忘れてしまったが?スゴい眼力の持ち主だと思う。

続きを表示

2022年5月3日のニュース