近江に見た“ミス”カバーできる確かなチーム力

[ 2022年3月26日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第7日第1試合・2回戦   近江7-2聖光学院 ( 2022年3月25日    甲子園 )

<近江・聖光学院>2失点完投勝利を挙げた近江・山田(中央)(撮影・成瀬 徹)
Photo By スポニチ

 【秋村誠人の聖地誠論】野球にミスはつきものだ。どんな名手だってエラーする。大切なのはそれをどうカバーするか。何げないシーンに近江(滋賀)の強さが見て取れた。

 5―2で迎えた6回の守備。先頭打者の打球はセンターに上がった。高い飛球。目測を誤ったのか、いったんバックした中堅・西川朔太郎が慌てて前進したが間に合わず、打球は中前に落ちた(記録は中前打)。試合は4回から膠着(こうちゃく)状態だっただけに、近江には嫌な先頭打者の出塁となった。

 ここでマウンドの山田陽翔がどんなそぶりを見せるか、注目してみた。すると、西川がポジションに戻るのを待って右手を上げ、これに西川もすぐに右手を上げて応えた。

 おそらく、こんな感じだろう。

 「大丈夫。気にするなよ」

 「すまん。次は任せてくれ」

 そんな短い“会話”の後、山田は全力で打者を抑えにかかる。1―1から外寄りのスライダーで狙い通りの遊ゴロ併殺だ。この回を無失点に抑え、聖光学院(福島)に傾くかに見えた試合の流れを食い止めた。仲間のミスをエースがカバー。その裏だ。先頭打者の西川はボールをしっかり見極めて四球。一塁へ向かうとき、左手を小さく握りしめた。ここから好機が広がり、9番・清谷大輔が右前適時打。西川が6点目のホームを踏んだ。

 「人間は失敗する生き物だ」とよく言われる。でも、失敗を取り返す能力も持っているのが人間で、カバーしてくれる仲間も周りにいる。山田はエースで4番で主将。ただ、決してワンマンチームではない。6回のシーンは当たり前のことなのかもしれないが、近江には、ミスをカバーして、取り返す確かなチーム力を感じた。

 出場辞退した京都国際の無念も背負う近江。代替校のベスト8は30年ぶりだ。その進撃をしっかり見届けたい。(専門委員)

続きを表示

2022年3月26日のニュース