負けの時こそ試される団結力 誠也、会沢…広島にある精神的支柱の頼もしさ

[ 2019年10月22日 09:00 ]

力投する広島・島内
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 広島のリーグ3連覇を支えた救援陣の不調は、それを補おうとする若手投手にも試練を与えた。今季は、中村恭、菊池保と中堅組の“新戦力”が台頭しただけでは補い切れず、若ゴイもブルペンの中心となって支えざるを得なかった。そんな酷な状況に寄り添ったのは、先輩投手だけではない。野手の主軸も、当然のようにケアを怠らなかった。

 たとえば、大卒新人の島内颯太郎投手(23)は悩んでいた。150キロ超の直球で押す強気の投球は、不安定な制球によってかき消された。登板機会が減少し始めた7月下旬、語りかけたのは鈴木誠也外野手(25)だった。

 「お前みたいなタイプなら、思い切って腕振ってど真ん中に投げれば大丈夫。腕を振っていたら、抜けた変化球でも対応できない。腕振るだけで全然違うから」

 今季で7年目を迎えた鈴木は、大卒新人から見れば2学年先輩。主軸に上り詰めるまでに積んだ経験を、ヒントとして与えた。

 「極端な話、もう思い切りやってダメだったら野球をやめるしかない。俺はそうやって割り切って考えてやってきた。人生で野球やっている時間の方が短いんだから」

 島内はうなずき、内心で驚いていたという。「誠也さんのレベルの選手でも、あそこまで想像しているなんて思いませんでした。2軍にいたときはすぐに1軍に上がりたくて結果が欲しいし、緊張感も違う中で縮こまっていたかもしれないですね」。

 また、一時勝ちパターンで起用された遠藤淳志投手(20)の心の弱さを見抜いたのは、会沢翼捕手(31)だった。6月22日のオリックスとの交流戦で、遠藤が2点劣勢の7回に登板。4番・吉田正への内角直球に首を振り、外角の変化球にうなずいた。結果は四球と勝負しきれなかった。試合後、優しく諭した。

 「逃げたのだとしたら、それはやめよう。打たれてもいいんだよ。遠藤の責任じゃない。俺のせいだから。攻めて勉強しよう」

 遠藤は、当時の心境を「吉田さんへの内角は、やっぱり怖かったんですよね」と素直に認める。そして、ときに内角勝負に敗れながら未来への経験を積んだ。

 会沢はチームメートについて「仲間という感覚が強い。仲間を絶対守ってあげようと思える」と言ったことがある。赤ヘル一丸には、投打も、年齢の壁もない。団結力は、負けた時に試されるもの。精神的支柱の頼もしさを再認識する今季だった。(記者コラム・河合 洋介)

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