【矢野阪神 1年目の真実(6)】結果残した黄金ルーキー、真価が問われる2020年

[ 2019年10月22日 08:30 ]

木浪(左)とグータッチする近本
Photo By スポニチ

 矢野阪神1年目はレギュラーシーズン6連勝締めで3位に入って逆転でのクライマックスシリーズ進出を決め、ファイナルステージで巨人に敗退して全日程を終えた。1年間密着してきたスポニチ担当記者が、今季を振り返った。

 近本、木浪がいなければ今季の猛虎打線はどうなっていただろうか。1972年の中村勝広と望月充以来、球団では47年ぶりに新人2人が開幕オーダーに名を連ね、シーズンでも結果を残した。そんな2人の活躍の裏側には並々ならぬ向上心と努力を惜しまない必死の姿勢があった。

 近本は長嶋茂雄(巨人)を超えるセ・リーグ新人最多159安打を放ち、36盗塁で盗塁王も獲得。入団直後から「新人王と盗塁王を目標にやっていきたい」と目標を明確に掲げ、実現に向けて持ち味の50メートル走5秒8の足にフォーカスしてきた。

 春季キャンプでは筒井外野守備走塁コーチと走塁面の強化に励み、シーズンに入ると試合中に相手の特徴やバッテリーの配球、自らが感じたことを記す「近本ノート」で情報量を増やしていった。また、投手のフォームの癖を見つけては出塁した際のリードの幅を微妙に変えたりするなど、次塁へ少しでも早く到達するべく試行錯誤を重ねた。

 木浪は紆余(うよ)曲折のシーズンだった。オープン戦では打率・373と数字を残したが、開幕後はすぐに壁にぶつかった。開幕から17打席連続無安打とオープン戦の好調がうそのように打棒が沈黙。5月15日の巨人戦では菅野の打球に飛びついた際に胸を強打。「やばい」と感じながらも痛みに耐えてプレーを続行し、6回には本塁打も放った。「チャンスをもらっているのに自分から投げ出したら、ここで終わってしまうかもしれない」。危機感を持っていたからこそ、辛抱できた。翌日には治療院に足を運んで必死にケアし以降もグラウンドに立ち続けた。

 7月26日に一度、2軍落ち。新井2軍打撃コーチからは「いいときの形を思い出して」と助言を受け、必死にバットを振り込んだ。7月30日に支配下登録された同世代の片山の存在も大きかった。寮では、よき相談相手で支配下が決まった当日の朝には片山から直接「支配下になったよ」と報告を受け、新たな刺激とした。

 8月6日に再昇格を果たすと、同18日巨人戦から近本に並ぶ球団新人記録となる13試合連続安打をマーク。一皮むけた姿を見せた。

 躍動の背景には、昨秋のドラフト会議後から活躍を疑問視する声もあったことから「1年目から戦力になる」という強い自覚と反骨心があった。「2年目のジンクス」を打破することができるか。“キナチカ”にとっては真価が問われる2020年となる。(長谷川 凡記)

続きを表示

2019年10月22日のニュース