【メモリアル甲子園総括1】オール秋田で取り組んだ強化プロジェクト 計画最終年に結実

[ 2018年8月22日 11:00 ]

<大阪桐蔭・金足農>敗戦に号泣する金足農・吉田(中央)
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 100回目の記念大会となった甲子園では、ファンの心を揺さぶるような名シーンが数多く起こった。歴史的な戦いが繰り広げられた舞台裏を、22日から3回にわたって検証する。1回目は、金足農旋風を支えた秋田県全体で取り組んできた「高校野球強化プロジェクト」に迫った。

 あと一歩の結果への悔しさとともに、秋田県内の野球関係者にとっては大きな手応えが残った。金足農の躍進。好投手・吉田がいたからという偶然ではない。目標を「全国4強」に設定し、教育委員会、高野連、中体連、野球協会などが一丸となって11年に「県高校野球強化プロジェクト」を発足。地道な活動が実を結んだ。

 秋田勢は98〜10年に夏の甲子園で13年連続初戦敗退。現在、県教育庁保健体育課学校体育・部活動班で指導主事を務め、秋田南で監督経験もある野中仁史氏(48)は「我々は“野球どころ”と自負していたが、“このままじゃ駄目だ”と佐竹敬久知事の号令で始まった」と振り返る。

 日本新薬元監督の前田正治氏ら指導経験者、動作解析や野球を科学的に分析する専門家をアドバイザーとして招へい。県内各地で指導に当たってもらった。秋田県は中学、小学の軟式野球が盛んで、決勝はテレビ中継されるほど。一方で、他県から野球留学してくる選手も少ない。そんな地域性を考慮し、社会人野球経験者が中心となって、中学3年生が部活を終えた8〜10月に高校野球への準備期間として硬球での指導会を県内各地で行う。最大で400人が参加。今回の金足農の部員も多かったという。プロジェクトには毎年約400万円の予算が組まれた。

 15年夏は成田翔(ロッテ)を擁する秋田商が甲子園で8強進出。当初は同年でプロジェクト終了予定だったが目標の4強まであと一歩だったことから3年延長し、最終年の今年に目標を達成した。

 今春はセンバツに由利工が出場。以前は県内のライバル校に情報を与える慣習はなかったが、野中氏は「宿舎はどうなのか、練習環境はどうなのか。今は情報を共有している」と話した。新たな目標は日本一。28日にはプロジェクト委員会による検証会議が行われる。 (高校野球取材班)

 ▼前田正治氏 県の本気に応えたいという思い。投手を見る時は、スピン量を計測し、科学的な分析もした。それで甲子園で1つ、2つ勝てるようになり、やればできるということが分かった。

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