洞察と信頼の4回突入劇 激走ゴメス、高代コーチとの心のつながり

[ 2016年7月27日 09:13 ]

<神・ヤ>4回1死二、三塁、大和の右犠飛で生還するゴメス

セ・リーグ 阪神5―3ヤクルト

(7月26日 甲子園)
 【内田雅也の追球】阪神4回裏、同点となる3点目は三塁ベースコーチの殊勲である。

 1死二、三塁、大和がスクイズをファウルとした次の球、右中間寄り前方に飛球が上がった。ヤクルト右翼手・雄平が小走りで捕球した。この瞬間、三塁コーチ・高代延博は三塁走者マウロ・ゴメスに本塁突入の「ゴー」を指示していた。

 走者は足の遅いゴメスである。本来は判断に迷う浅い飛球だ。「オレもクロスプレーになると思った」と高代は言った。イチかバチかの判断だが、むろん根拠はある。

 「左投げで右中間寄りだから、モーションが逆になる。右翼線寄りなら止めていた。彼は投げるのはいいからね」。今月13日の神宮では2回表2死一、二塁から右前打で二塁走者・岩崎優にストップを命じていた。

 もう一つの根拠は、この回1点目となった1死二、三塁、ゴメスの右前ポテン打での雄平の追い方だった。「十分捕れる飛球だった。どうも動きがおかしい……と見ていた。故障とまではわからなかったけどね」。実は雄平は1回表の打席で左脇腹を傷め、守備の時もつらかったそうだ。

 「右中間寄りとはいえ、いい体勢で捕られたら止める気でいた。ゴメスにはタッチアップと言って、最後のゴーは捕る瞬間に行った」。高代ギリギリの判断である。

 果たして、ゴメスは生還を果たした。それも悠々セーフだった。雄平の本塁送球は遅く緩く、捕手・中村悠平が本塁上での捕球をあきらめ、前に出たほどだ。

 この送球の直後、雄平はその左脇腹痛を訴えベンチに下がった。高代が「おかしい」と見た目は確かだったのだ。

 作家・藤本義一は文章を書く際の心掛けを「カン・コウ・スイ・ドウ」としていたそうだ。昔、飛行機の機内誌で読んだのを覚えている。物事をよくみて(観察)、次いで考え(考察)、推し量り(推察)、そして本質や奥底にあるものを見抜く(洞察)。高代が行ったのは単なる観察ではなく、洞察力と言える。

 さらに、もう一つ。高代はゴメスが先発から外れる今月20日、巨人戦(甲子園)の前に語りかけた。「若手が多い今、君の姿勢をみんな見ている。手本になってくれ」。ゴメスは「サンキュー」と礼を言ったそうだ。

 あの突入時、血相を変えてのゴメス激走には心のつながりもあったと記しておく。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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