物議醸すハーパーへの四球攻め 知将マドン監督の視線は10月?

[ 2016年5月13日 09:00 ]

ナショナルズのブライス・ハーパー外野手(AP)

 ゴジラ松井の5敬遠を彷彿とさせる事態が、メジャーリーグで起こった。8日のカブス―ナショナルズ戦。ナ軍の主砲、ブライス・ハーパー外野手(23)は終始勝負を避けられ、全7打席で3敬遠を含む6四球1死球。0打数で7出塁は、100年以上の歴史を持つ大リーグで史上初の珍事となった。

 3敬遠のうち2つは、2死一、二塁と一塁ベースが埋まっている状況下で。カ軍のジョー・マドン監督は徹底していた。結果的にこの作戦が功を奏し、試合は延長13回にカブスがサヨナラ勝ちでものにした。

 衝撃は瞬く間にメジャー全体へ波及した。記者は当日、ヤンキースタジアムでヤンキース―レッドソックス戦を取材していたが、試合後のジョー・ジラルディ監督の会見で早速このことが質問で飛んだほど。ヤ軍はレ軍の主砲オルティスに2本塁打を浴び敗れていたのだが「今日、カブスはハーパーを7度も歩かせて勝ったんだが。オルティスに対してそうしようとは思わなかったのか?」と米国人記者が尋ねた。

 ジラルディ監督は「そうしようにもレッドソックスは打線として素晴らしいからね」とだけさらりと切り返したが、質問者の意図は「6四球1死球」の是非についての意見を求めていたのは明らかだった。

 ナ軍のロアーク投手は「臆病者の野球だ」とカ軍を非難し、ダスティ・ベイカー監督は「ハック・ア・シャックか」と例えた。ハック・ア・シャックとはバスケットボールにおいて、フリースローの下手な選手に対し意図的にファウルを繰り返すこと。「シャック」こと元レイカーズのシャキール・オニールがよくこのプレーの標的となり、通り名として定着した。

 カブスはこの一戦に限らず、カード4連戦でハーパーを計13四球と歩かせ続け4連勝を飾った。4連戦での13四球も、記録会社エライアスによれば記録が残る1913年以降では最多という。心理戦が大好きな知将マドン監督は「ハーパーは本当に素晴らしいタレントだ。いつの日かバリー・ボンズの域に達する」と歴代最多762本塁打のスラッガーの名を挙げ、ほほ笑む。世間がこの作戦の是非について議論し始めたのを歓迎し、望んでいたようにも映る。

 今季好調のカ軍とナ軍はプレーオフ進出の有力候補同士。10月のポストシーズンでの再戦が早くも有力視されている。地区が異なりレギュラーシーズン中の対戦は、残すは6月の3試合だけ。「10月の野球」もにらみ、行方が楽しみなカードと言えそうだ。(記者コラム・後藤 茂樹)

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