【内田雅也の追球】本番への機運 不安を打ち消すのは、相手や自分への信頼感とチームを思う一体感

[ 2023年3月23日 08:00 ]

オープン戦   阪神4―6巨人 ( 2023年3月22日    東京D )

5回5失点に終わった西純
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 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝を果たした侍ジャパンで際だっていたのは一体感だった。

 優勝後のインタビューで大谷翔平が「正直、終わってしまうのがちょっとさみしい」、ダルビッシュ有が「素晴らしい時間だった。この仲間と離れるのが寂しい」と語っていたのが印象的だった。それほどチームへの愛着があったのだ。

 <決勝は別れの日だ>と野球殿堂入りの記者、鈴木美嶺が書いている。都市対抗の決勝戦に寄せた毎日新聞のコラム『黒獅子の目』である。<生い立ち、境遇、年齢、人生観。それぞれ違うひとたちが――>と、まるでWBCのように書いたのは、補強制度で他チームの選手も混じるからだ。<――都市のため、チームのため、自分のため、白球を追って、くる夏もくる夏も全精根を傾ける。それだけになお決勝は残酷だ>。勝つためには別れを惜しむような一体感が必要なのだろう。

 今回の侍ジャパンは7戦全勝で優勝まで駆け上がったが、大会前の強化試合(3日・バンテリンドーム)では中日に2―7と完敗を喫していた。本番に向け、徐々に投打のつながりや一体感を高めていったわけである。

 ならば、阪神は今から一体感の機運や一丸姿勢を高めていきたい。今春2度目のナイターとなったこの夜は投打ともに不安ばかりが目立った。

 先発・西純矢は5回を投げ10安打5失点。気になったのは5回裏だ。無死満塁から遊ゴロ併殺で1点を失ったが2死三塁。ここから3点を失った。最少失点で踏ん張る粘りがほしかった。

 打線も巨人新外国人の左腕ヨアンダー・メンデスに6回途中まで4安打、得点は森下翔太3号ソロの1点だけだった。主軸の大山悠輔、佐藤輝明のバットからまた快音が聞かれなくなった。

 WBC優勝の興奮に酔うなか、プロ野球開幕まであと8日と迫った。オープン戦はあと3試合しか残っていない。今年はやれるだろうか……と、監督も選手たちも、不安や恐怖に襲われる日々がやってくる。

 そんな不安を打ち消すのは、相手や自分を信じる信頼感と、チームを思う一体感だろう。

 この仲間と一緒に、このメンバーで「アレ」をつかみたい。そんな気持ちの高ぶりを見たい夜だった。=敬称略=(編集委員)

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2023年3月23日のニュース